マーケティング

2026.08.21 08:51

AI時代のマーケティング差別化要因 センス、タイミング、判断力が鍵となる理由

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この1年、私はさまざまなリーダーシップ会議に出席してきたが、案の定、AIの話題が持ち上がり、そのほとんどが最終的に予算に関する議論へと発展した。

多くの人々が最も多く発している問いは、「どうすればマーケティングをより安く、より速く行えるか」というものだ。一方で、「どうすればマーケティングをより良く、より革新的にできるか」という問いは、あまり耳にしない。この2つは、マーケティングにおけるAIについてまったく異なる思考の筋道を示している。

コスト削減の議論は、私が最も嫌うものだ。ビジネスを失うことを恐れているからではない。マーケティングを単なるコモディティ化された安価な労働力とみなし、戦略的なマーケティングやクリエイティブな判断を当然のものとして扱っているからである。こうした議論では、アウトプットの量と効果が混同されがちだ。AIは成果物を出力することはできるが、それを繰り返すだけではビジネスの獲得にはつながらないことを、私は目の当たりにしてきた。さらに、AIはオーディエンスとのつながりが途切れる瞬間を見落としがちだ。

これに対し、私は人間の能力を拡張(オーグメンテーション)することこそが、より多くの可能性を引き出せる強力なアプローチだと考えている。私の見解では、AIを活用したマーケティングは、アウトプット1件あたりのコストだけに焦点を当てるべきではない。むしろ、成果物の質を高め、より多くの顧客にリーチし、業務効率を向上させるために活用すべきである。

現実の検証:洗練されていることと強力であることは別物

AIによって、コンテンツから基本的なデザインに至るまで、成果物を低コストかつ大規模に制作できるようになったことは認める。これは画期的なことだ。しかし、同時に罠でもある。かつては「なかなかの出来」を作るのにもそれなりの労力が必要だったが、今ではプロンプトを1つ入力するだけで実現できるからだ。しかし、まさにそこに問題がある。

誰もが同じツールを利用できる環境では、「そこそこ良いもの」はもはや目立たないからだ。誰の作品も洗練されて見え、すべての要件を満たしている。今や「そこそこ良いもの」が新たな基準(ベースライン)とみなされているため、多くの人々は能力そのものを競争優位性とは捉えなくなっていると私は考えている。

判断力の価値

残念なことに、純粋なコスト効率の観点からのみAIを捉えているリーダーがあまりにも多い。特にマーケティングの分野において、彼らはコンテンツ制作のコストが下がれば、戦略構築のコストも下がるはずだと考えている。

しかし、私に言わせれば、その論理は破綻している。AIによって制作コストが下がるかもしれないが、それは市場における競争が激化することを意味する。その結果、判断力の価値が高まるのだ。判断力とは、AIが生成したものが、実際に市場に出す価値があるかどうかを見極めることである。

AIの台頭により、マーケティングの価値はより速いペースで最上流プロセスへと移行している。この傾向は、戦略領域や意思決定において顕著に見られる。例えば、単に今日効果があるものではなく、長期的な観点からどのポジションを確立すべきかを選択する、といった意思決定である。

量の増加はモメンタムではない

現在、マーケティングチームがAIに関して直面している最大のリスクの一つは、これまで以上に速くコンテンツを制作し続けることを求められながら、経営陣が真に重要なものが何かを定義しようとしないことだ。制作スピードが最優先されることで、差別化や記憶に残ること、そして実際のインパクトを担保することが後回しにされてしまう。

コンテンツの量を増やしたからといって、必ずしも勢い(モメンタム)が生まれるわけではない。最初から戦略が曖昧なまま、迅速に実行しようとすれば、その問題が倍増するだけである。

私はこの問題に日々直面している。提案(ピッチ)では一つのことを言っているのに、ウェブサイトでは別のことが書かれている。さらに別のチームから異なる内容の記事が3つも公開される。その一方で、SNSチームはコンテンツカレンダーに沿って投稿を量産し、営業チームはまったく異なるストーリーを語っている。不整合な情報の発信スピードが社内の調整スピードを上回り、AIが生成したメッセージは繰り返されるたびにつまらなくなっていく。平たく言えば、よりバラバラなコンテンツが生み出され、組織のサイロ化がさらに深刻化するのだ。

これこそが、私が「メッセージの劣化(Message Decay)」と呼ぶ現象である。

ワーキングセッションの直後は、全員がそのメッセージに興奮して部屋を後にする。しかし、その後チームがサイロ化し、修正作業が始まる。あるリーダーが表現を和らげ、別のリーダーがニュアンスを加える。そして気づけば、誰もが異なるストーリーを語るようになっている。

個々の決定自体は不合理なものではない。しかし、それらが積み重なることで、そのアイデアをそもそも記憶に残るものにしていた本質が削ぎ落とされてしまう。

私が何度も目にしてきた問題は、こうした状況において、関係者全員が「最初にそのアイデアを聞いたときに感じた魅力」が修正を経てもなお維持されていると信じ込んでいることだ。少しずつインパクトが失われていったことに、誰も気づかない。残されるのは、技術的には正確で広く受け入れられやすいものの、戦略的には記憶に残らないメッセージである。公開直後、リーダーたちはそれが一時的に新鮮なコンテンツに見えるため、トラフィックの急増を目にするかもしれない。しかし、数週間が経つと、エンゲージメントは急速に低下していく。

メッセージ規律がこれまで以上に重要である理由

私の見解では、一貫したメッセージ規律(Message Discipline)を持つことこそが、マーケティングにおける新たな強みであり、整合性の取れたメッセージ戦略には極めて高い価値がある。

アセット(素材)を制作する前にメッセージを形成し、信頼が獲得されるカスタマージャーニーのあらゆる接点において、そのメッセージの意味を守り抜くことほど価値のあることはないと、私は信じている。それはピッチ、ウェブサイト、営業資料、SNSへの投稿、その他すべての顧客とのタッチポイントに共通して言えることだ。

勝利を収める企業とは、単に量を多く生み出す企業ではなく、独自性と一貫性のあるメッセージを発信している企業である。その結果、市場はその企業が何を掲げているのかを認識し、何が他社と異なるのかを理解するようになる。

センスを自動化できない理由

私の観察によれば、AIが危険なのは、マーケターやチームを代替するからではなく、私たちが「平均的なクオリティの成果物」を安易に受け入れるようになってしまうからだ。センス、判断力、そしてタイミングを持つことこそが、今後もあらゆるブランドや組織を他と差別化する要因であり続けるだろう。

センスとは、ある表現が洗練されているように聞こえても、実際には何も語っていないことを見抜く力である。判断力とは、何がオーディエンスにとって重要であり、何が単なるありきたりな情報に過ぎないかを理解することだ。そしてタイミングとは、変化が必要な瞬間を察知することである。

私の見解では、最大の皮肉は、多くの人々が優れたマーケティングに対して「センスが良い」という言葉を使わないことだ。彼らはただ、それを覚えている。あるいは信頼する。そして、それを自ら進んで共有する。センスは追跡可能な成果物ではないため、目立たない。それは、ブランドが人々に与える印象を形作る意思決定の背後にある、目に見えないレイヤー(階層)である。すべてのメッセージが他と同化し始めたときに初めて、その不在に気づくのだ。

真の差別化はますます稀少になっている。しかし、それこそが、フォーカスすべき最も価値の高いマーケティング業務、すなわち人間にしかできない仕事だと私は考えている。したがって、マーケターとしてまず最も重要なことに集中すれば、AIはそのアイデアを増幅させ、より遠くへ、より速く届ける手助けをしてくれる。結局のところ、本当に重要なのは依然として、戦略と独自の視点なのだ。

私は日常生活において、AIを頻繁に、しかし慎重に利用している。そして、最終決定は常に自分で行う。AIは文章を整えるための優れたツールだとは思うが、その一文を採用するか、それとも削るかを決定するのはAIではない。AIは私の「声」ではない。それは単に、私の「新しいペン」に過ぎないのだ。

確信こそが強みとなる

私にはシンプルな行動原則がある。それは、アイデアから実行までの距離を縮めるためにAIを活用するが、センス、タイミング、判断力をAIに委ねることはしない、ということだ。

AIを適切に使用すれば、優秀なリーダーはより多くの仕事をより迅速に行えるようになる。しかし同時に、質の低いコモディティ化されたアウトプットも単に目立つようになり、「そこそこのクオリティ」の基準は上がるものの、市場全体で見られる成果物の総合的な質は低下することになる。

マーケティングでの成功は、他者よりも巧みにAIを活用する方法を学ぶリーダーたちのものになると確信している。機械によって支援された画一的なコンテンツで溢れる市場において、量を多く持っていることはもはや優位性にはならない。

では、真の強みとは何か。それは、他ならぬ自分自身にしか語れないユニークな何かがあることを察知し、そもそもなぜそれを発信する価値があるのかを理解する判断力を持つことである。

forbes.com 原文

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