米国株担当チーフストラテジストのデービッド・コスティン氏は、金利の上昇と企業収益の利益率がピークを迎えたこと、輸出依存企業に対する逆風といった要因で、2016年のS&P500指数目標を現状の数値と変わらない2100に設定した。
「我々はS&P500は2016年も2年連続で持ちこたえるとみている」と動きの小さい市場になると予測している。
2015年、市場の伸びに貢献したのは数少ない銘柄だ。市場から利益を得るために、ファンドマネージャーが保有すべきはAmazonやFacebook、アルファベット(Google)等の株だった。
どうすれば厳しくなるであろう2016年に数少ない勝者となる企業を見つけられるのか。ゴールドマン・サックスは「強い財務体質、高い国内売上、伸びしろのある利益率の3つが必要だ」と示す。これまで利益率を拡大させてきた主だった要因である「低金利とアウトソーシング、技術革新」といった材料が出尽くしたために、最後の1つである伸びしろのある利益率が最も厳しい要件だ。
「人件費と医療費が上昇しているため、企業の多くが利益率を維持することがやっとという状態になるだろう」
例えばハイテク株では、近年利益率が18%も拡大した。これは市場全体の平均の2倍だ。これにはもちろんAppleが寄与するところが大きく、同社は2009年からハイテクセクターの40%の利益率拡大に貢献している。
ゴールドマン・サックスによると、一般消費財やヘルスケア、ハイテクセクターの中で、前述の条件の2つを満たすのは35銘柄に過ぎないという。来年の勝者になる企業は、今年とほぼ同様の見通しだ。
AmazonやFacebook、AlphabetやMasterCard、Visaらが成功する。また同社はPricelineやスターバックス、タイム・ワーナーが利益率を伸ばし続けると予測し、チポトレ・メキシカングリルも高い売上と強い財務体質から利益を得ると考えている。
ヘルスケアでは、AmgenとBristol-Myers Squibbが今後数年にわたって利益率を伸ばす可能性があるとしている。
他に注目すべきは、ついに金利が動くと予測される金融セクターだ。ゴールドマンはWells FargoとU.S.Bancorpに中立的な格付けをしているが、両者ともに米国売上は高く、金利が現在の最低レベルから上昇するならば純利益は上昇するだろう。
ゴールドマンは連邦準備制度が12月に利上げを行う一方、中央銀行は市場が考えているよりももっと早い段階で引き締めに入ると考えている。同社エコノミストは2016年と2017年に100ベーシス・ポイントの利上げを予測している。
そうした急な利上げサイクルとともに「株の価値評価の緩やかな下落」が起こるだろう。現在のぬるい景気拡大のなかで、投資家らが未来に対する投資を渋るのは理にかなっている。
そして投資家はハイテク企業のような成長株に与えられた「稀少性プレミアム」から、REITのような代替債権や公共事業株といった配当利回りの高いものへと関心を移すかもしれない。
大統領選挙の来年は投資家にとって波乱の年になるだろう。今年9月には、ヒラリー・クリントンの一言のツイートがバイオテクノロジー株に急落をもたらした。「株式市場に過大な期待を抱くのはやめたほうがいい」とゴールマン・サックスは述べている。