経営・戦略

2026.08.21 08:33

ITサポートからビジネスインフラへ:企業のAI変革を牽引するMSPの役割

stock.adobe.com

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マネージドサービスプロバイダー(MSP:ITシステムの運用や管理を外部から請け負う事業者)モデルの変革は比較的緩やかに進んできたが、AI(人工知能)の登場によって、もはや緩やかな変化は選択肢ではなくなった。

その始まりはサイバーセキュリティだった。大規模な情報漏洩が全米の注目を集め、甚大な損失をもたらすようになると、企業はMSPに支援を求めるようになった。MSPはヘルプデスク、パッチ適用、データバックアップといった戦術的なITサポートにとどまらず、リスク評価、セキュリティ計画、クラウドセキュリティ、コンプライアンスに関する専門知識を提供するまでにサービスを拡大した。

これによりMSPは「サービスプロバイダー」から「戦略的パートナー」へと進化を余儀なくされた。そしてAIの登場により、その変化は一気に加速した。

AIが企業にできること、すべきことを書き換えつつある今、企業は部門・チーム・ワークフローを横断して最先端テクノロジーに依存するようになっている。テクノロジーがかつてないほど事業運営を支える一方で、AIは未知で実績も乏しく、リスクも伴うため、大きな不確実性を生み出している。

こうしたAIの力を活用するための自然な解決策となるのがMSPである。彼らの技術的な専門知識と、過去10年間にわたり培ってきた戦略的洞察力は、AI時代において確かな強みとなる。とはいえ、MSPが新たな責任に本腰を入れる必要があるのと同様に、顧客側もMSPの役割をこれまでとは異なる視点で捉え直さなければならない。

現代のMSPはいかにしてビジネスインフラを構築しているのか

AIは単なる新しいツールやテクノロジーではない。技術スタックに部品を1つ追加するのではなく、ビジネスにまったく新しい層を加えるものだ。

そのレイヤーは、データへの迅速なアクセス、容易なインサイト(洞察)の獲得、確度の高い予測の構築、無数のタスクの自動化など、多くのメリットをもたらし、今後数年でさらに多くの可能性が開花するだろう。しかし、見返りにはリスクが伴う。ツールの保護から、出力の検証、すべてのコンプライアンス維持に至るまで、AIレイヤーは深刻なセキュリティ上の問題をもたらす。これらのメリットとデメリットのバランスを取るには、データ、AI、そしてビジネス戦略を緻密に設計(アーキテクチャ化)する必要がある。

すべてが整合すれば、AIはほぼあらゆるものを改善できる。整合しなければ、同じだけ多くのものを崩しかねない。

だからこそ、企業はAIを正しく導入するために、MSPへの依存を強めている。より高度なプロバイダーは、AIを安全かつ成功裏に導入するための実証済みのプレイブック(手引書)を提供している。AIを使って課題を解決し、機会を引き出した経験を持つ人材も提供している。そして、初期戦略の策定から実装、その後に至るまで顧客と密接に連携している。その姿は、第三者のプロバイダーというより、事業の延長線上にある存在に近い。

このモデルを受け入れたMSPは、単にサービスを提供するだけの存在を超えている。今後数年にわたり企業の競争力と存在意義を保つビジネスインフラの構築を支援しているのだ。AIを資産、負債、そして必需品として適切に扱う時間と人材を備えた企業は少ない。そこで、この時代の要請に応える新たなタイプのMSPが登場している。

これは大きな問題を解決する。だが同時に別の問題を生む。すなわち、戦略的パートナーを自称するだけでなく、AIを基盤にビジネスインフラを構築する真の適性を備えたMSPをどう見つけるか、という問題だ。

MSPの選定における新たなベンチマーク基準

かつて顧客は、サービスの内容と価格に基づいてMSPを選定していた。しかし、MSPが不可欠なパートナーとなった現在、そのサービスを明確に定義することは難しくなり、価格よりも提供される「価値」が重要視されている。能力を誇張することは容易であるため、ビジネスの根幹を委ねる相手として不適切なMSPを選定してしまうリスクは現実にある。選定の際は、以下の特徴を備えているかを確認すべきだ。

ガバナンスへのコミットメント:MSPは、ツールやユースケースを紹介するだけでなく、この強力なテクノロジーに本質的に伴うリスクを管理・軽減するために設計された、拡張可能なAIガバナンスプログラムの構築にコミットしているべきである。

多様な研修プログラムの提供:AIツールの価値は、それを使うユーザー次第である。セキュリティやコンプライアンスの問題を発生させることなく、あらゆる役職の従業員がAIを活用して自身の業務を強化できるよう、指導・トレーニングできるMSPを選ぶべきだ。

初期パイロットプログラムの提供:AI戦略は今後数年間で絶えず進化していくが、だからといって特定のMSPと長期契約を急ぐ必要はない。代わりに、数カ月で有意義な成果を示すように設計されたパイロット(試験的)プログラムを提案できるMSPを選ぶとよい。

戦略の標準化への取り組み:多くの企業では、すでに複数のAIツールがチームや部門ごとにばらばらに使用されている。MSPは、現場に摩擦を生じさせることなく、共通のツール、ポリシー、優先事項に全員を統一(標準化)できなければならない。

継続的な学習姿勢:AIは急速に進化しており、昨日通用した手法が明日も通用するとは限らない。MSPに対し、自社が学び、進化し、提供サービスを変化のペースに追従させるために何を行っているかを問い質すべきだ。

自社内でのAI活用:MSP自身が、自社のビジネスインフラをAIで構築することに注力しているかどうかが極めて重要である。彼らが社内でどのようにAIを使用しているか、どのような成功と失敗を経験し、それらの発見をいかにして顧客サービスの向上に還元しているかを探るべきだ。

ボストン コンサルティング グループ(BCG)の調査によると、2026年も94%の企業がAIへの投資を継続し、その多くが投資額を倍増させる計画だという。どの企業もその投資を回収したいと考えている。問題は、それをどのように実現するかだ。

すでに強固な戦略や専門チーム、基礎が確立されている企業であれば、外部パートナーを必要としないかもしれない。しかし、それ以外の企業にとっては、戦略的目標を有意義なビジネスインフラへと変えてくれるAIの専門家がいなければ、投資額を増やしても損失を拡大させるだけに終わるだろう。

現時点で、すべての企業が成功のためにAIが必要であることを理解している。そして今、各企業はシンプルな問いに対して誠実に答えを出さなければならない。すなわち、「私たちは自力でAIを使いこなせるだろうか?」という問いに。

forbes.com 原文

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