欧州

2026.08.21 09:30

今夏の猛暑が欧州に与えた経済損失 EUのGDPは33兆円減少する可能性も

熱波の影響で通常の流量を大幅に下回るフランス南西部トゥールーズを流れるガロンヌ川。2026年8月18日撮影(Alain Pitton/NurPhoto via Getty Images)

熱波の影響で通常の流量を大幅に下回るフランス南西部トゥールーズを流れるガロンヌ川。2026年8月18日撮影(Alain Pitton/NurPhoto via Getty Images)

この夏、欧州各地を襲った記録的な熱波は多大な経済損失をもたらした。

英シンクタンク「バーダント」は、5月以降の異常気象により、英経済は少なくとも44億ポンド(約9500億円)の損失を被ったと推計している。猛暑がさらに激化した場合、2030年までに累積損失は256億ポンド(約5兆6000億円)に達する可能性があるという。

この分析は、英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)グランサム気候変動環境研究所による先行研究の結果を裏付けている。同研究所は、6月の熱波による労働時間の減少だけで、英国では11億ポンド(約2400億円)の損失が生じたと算出していた。

英気象庁は今月初め、イングランドとウェールズで観測史上最も乾燥した7月を記録したと発表した。英政府の助言機関である気候変動委員会(CCC)は5月、気候変動が英国の生活のあらゆる側面に影響を及ぼしており、中でも、熱波、洪水、干ばつが3大リスクとなっているとして警鐘を鳴らした。

バーダントの共同代表を務めるジェームズ・ミーデー博士は次のように述べた。「気候変動による経済損失は既に現実のものとなっており、今後さらに増大するだろう。猛暑の深刻な影響から労働者や企業を守るための政府の対策は、もはや待ったなしだ」

英法律事務所メヨ・ウィン・バクスターのサマンサ・ディッキンソン弁護士は、バーダントが推計した44億ポンドの経済損失は、極端な気温が深刻な労働問題になりつつあることを示していると指摘した。その上で、雇用主は、過酷な作業や屋外作業に従事する従業員や、健康上の理由から高温の影響を受けやすい従業員に特に注意を払うべきだと助言した。同弁護士は、英国が最終的に労働に対する最高温度の基準を設けるかどうかは政府の判断に委ねられているものの、雇用主は具体的な温度基準が定められるまで待つべきではないと警告した。「政府は既に極端な気温に関する職場の安全指針の見直しを進めているが、こうした取り組みは、安全に作業するには職場の温度が高過ぎると判断される基準について、明確化を求める圧力を強めることになるだろう」

一方、オランダのトリオドス銀行による分析では、今夏の異常気象により、欧州連合(EU)の域内総生産(GDP)が約1800億ユーロ(約33兆円)減少する可能性があり、当初予測されていた成長が相殺されると試算されている。

トリオドス銀行は、猛暑による経済的影響の中で最も深刻だったのは、労働生産性の低下だと指摘した。同社は、今夏の労働生産性の低下による経済損失は、EUのGDPの約0.6%に相当すると推計している。

食料価格の高騰、発電量の制約と電気料金の値上げ、そして輸送機関の混乱は、いずれも経済損失を拡大させる。影響は国によって大きく異なり、最も大きな打撃を受けるのはフランスで、GDP成長率が1.4ポイント低下すると予測されている。さらに、イタリアやスペイン、そして程度は低いもののベルギーも大きな損失を被る一方で、猛暑日が少なかったポーランドでは影響は比較的小さいとされた。

EUの気象情報機関「コペルニクス気候変動サービス」によると、西欧の今年の6~7月は観測史上最も暑い期間となり、先月までに4回の熱波が襲来した。同機関によると、西欧で5~6月にかけて観測された広範囲にわたる乾燥状態は現在も続いており、フランス、スペイン、ドイツの一部地域では異常な少雨が報告されている。

トリオドス銀行のハンス・ステゲマン主任エコノミストは次のように述べた。「この夏は、気候変動が遠い将来の経済リスクではないことを示している。現在、私たちが経験している猛暑は、気候変動が欧州全域の生活、労働者、そして繁栄にどのような影響を及ぼすのかを具体的に示している」

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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