注意すべき点
学術誌『The Journals of Gerontology: Series B』に2020年に掲載された研究では、12カ所の高齢者センターに通う高齢者約400人をランダムに合唱グループに振り分けたところ、孤独感や人生への関心には改善が見られたものの、認知機能や身体機能には改善が認められなかった。同試験はこの分野で最大規模のものだ。
その他の研究の多くは合唱団に志願した少数の被験者を対象としており、参加者に自分がどのグループに割り当てられているのかを知らせないようにすることもできない。見知らぬ人たちと一緒に歌うことにひかれる人は、そもそも何をしても比較的良好な状態になりやすい人なのかもしれない。
また、効果を生み出している要因が「歌うこと」そのものである可能性も低い。重要なのは、歌うという活動がたまたま満たしている特定の条件の組み合わせであるようだ。つまり、自分の歌声が嫌いな人でもダンス教室やローイングのクラブ、アマチュアのスポーツチーム、地域の共同菜園などからほぼ同じ効果を得ることができる。
失敗しがちなのは、こうした記事を読んだ後、自宅で1人で試そうとするパターンだ。1人で取り組む趣味にももちろん価値はあるが、そこで最も重要な役割を果たす2つの条件、つまり他の人の存在と、気乗りしない夜でも足を運ぶよう促すスケジュールが欠けてしまう。
あらゆる趣味を「幸福感を高めるもの」にする方法
ここから得られるより実用的な考え方は、あらゆる趣味にいくつかの問いを投げかけてみることだ。その趣味は自分の意思で自由に選んだものなのか、それとも義務のように感じているのか。無理なくできる範囲より、ほんの少しだけ多くのことを求められているか。他の人もそこにいるか。現実的にほぼ毎週続けられるか。
この4つの問いに「はい」と答えられる地味な活動の方が、「はい」が半分の華やかな活動よりも一般的にはその人の気分を高める。もっと面白い答えを期待していたのなら、少々がっかりするような結論かもしれないが、そうでない人にとってはかなり気が楽になる結論だ。なぜなら、これらの条件はほとんど誰にでも満たすことができるものだからだ。結局のところ、活動の内容よりもどのような形で行われるかの方が重要なのだ。


