トルコの首都アンカラで先月7~8日、北大西洋条約機構(NATO)首脳会議が開かれた。2日間にわたる同会議では、加盟32カ国の代表が防衛費について協議した。また、防衛産業基盤の強化や防衛製造能力の向上に向けた取り組みにも重点が置かれた。さらに、複数の加盟国がウクライナへの追加支援を表明した。
だが、今回の首脳会議で目立ったのは、旧ソ連構成国ジョージア(グルジア)の不在だった。NATOは2008年の首脳会議以来、加盟候補国のジョージアと定期的に協議を重ねてきた。同年には、加盟に向けたジョージアの取り組みを支援するための委員会が設立され、2010年には同国に連絡事務所が設置された。同国はNATOの軍事演習にも定期的に参加している。
だが、ジョージアは今年のNATO首脳会議への出席を見送った。会議を締めくくる首脳宣言でも、ジョージアに対する同機構の関与や支援については一切触れられなかった。実際、同国がNATOの首脳宣言で言及されたのは、2024年の米首都ワシントンで開かれた首脳会議が最後だった。その際、NATOはロシアに対し、ジョージアから軍隊を引き揚げるよう求めていた。それを最後に、NATOが首脳宣言でジョージアに言及することはなくなった。
米シンクタンク大西洋評議会のエト・ブジアシビリは筆者の取材に対し、次のように説明した。「ジョージアとNATOの間の溝が深まっていることは、相互に関連した視点から捉えるべきだ。ジョージアの民主主義の後退と、同国の戦略的方向性に対するロシアの影響力を強めている、広範な地政学的再編が関係しているのだ。与党『ジョージアの夢』による権威主義体制の強化に加え、これまで掲げてきた親欧米路線からの後退や反欧米的な言説、ロシアの戦略的利益に沿う政策により、(NATOとの)実質的な統合は困難になっている」
NATOのマルク・ルッテ事務総長は昨年、ジョージアとの関係について問われた際、同国の民主主義の後退を「深く懸念」していると答えた。今年3月に公表された「2025年NATO事務総長年次報告書」には、2024年10月のジョージア議会選挙の結果を受け、「NATOとジョージアの協力関係の一部について、優先順位が見直された」と記されている。他方で、「ジョージア軍との防衛協力は進展した」とされた。
ジョージアが今回のNATO首脳会議を欠席したことについて、同国のレバン・ドリゼ元NATO大使は、同国はかつて同機構にとって「最も重要な加盟候補国」だったが、現在はその地位が「疑問視されている」と指摘した。同国のチナチン・ヒダシェリ元国防相もソーシャルメディア(SNS)に、ジョージアが「民主主義の後退を理由に(NATOの)関連行事から排除された」と投稿。両者の関係は現在「事実上凍結状態にある」と記した。
ロシア寄りの与党「ジョージアの夢」の下で、ジョージアはNATOや欧州連合(EU)から距離を置き始めている。2024年の議会選挙で過半数の議席を確保した同党は、EUとの加盟交渉を中断したほか、NATOとEUに関する情報センターも閉鎖した。同党を創設したビジナ・イワニシビリ元首相は、ジョージアがNATOやEUに加盟すれば、再びロシアとの戦争に追い込まれる可能性があると主張している(2008年の軍事侵攻以来、ロシアはジョージア領土の約2割を占領し続けている)。



