重症の負傷者が外傷治療室(トラウマベイ)に搬送されてきたとき、私たちが最初にすることは気管挿管ではない。胸腔ドレーンの留置でもない。輸血の開始でもない。
私たちは役割を割り当てる。1人が蘇生を指揮し、別の1人が気道を管理する。さらに別の1人が血管アクセスを確保する。記録する担当者もいれば、薬剤を投与する担当者もいる。誰が何の責任を負っているのかを全員が正確に把握できるよう、ラベルを身につけることも多い。
なぜか。負傷した患者をケアする最初の数分間において、「不確実性」は死を意味するからだ。2人のスタッフが同じ患者に挿管しようとすることは、誰も挿管しないのと同等に危険である。明確な役割分担が、連動した行動を生み出す。躊躇や重複、そしてミスを減らすのだ。
医療現場は、緊急時における役割の明確さの重要性を理解している。だが、それ以外の場面でもその重要性を十分に認識しているとは、私は確信していない。
外傷治療室の外では、医療現場はしばしば、職員に主体性を求めながらも、その権限の範囲を曖昧にしたままにしている。私たちは従業員に当事者意識(オーナーシップ)を持つよう促すが、その当事者意識が実際に何を意味するのかを定義できていないことが多い。
ホスピタリティ業界を対象とした最近の研究は、医療リーダーにとって重要な教訓を示している。業界の設定は異なるものの、その知見は私たちの世界にも実に見事に当てはまる。研究者らは350人以上の現場従業員とその管理職を調査し、従業員が自発的にプロセスを改善し、問題を解決し、自らの職務記述書(ジョブディスクリプション)の枠を超えて行動する原動力が何であるかを探った。その結論は、リーダーシップにおける最大の前提の一つに疑問を投げかけるものである。彼らは、主体的な行動は本質的に「モチベーション(動機付け)」の問題ではなく、「イネーブルメント(能力開花や環境整備)」の問題であることを見出したのだ。
私たちは、可能にしていないことを動機づけようとしている
研究者らは、従業員が誰かに指示される前に自発的に課題を特定し、プロセスを改善し、前向きな変化をもたらそうとする姿勢を「主導的行動(taking charge behavior)」と呼び、これを分析した。その結果、従業員が一歩踏み出すかどうかを確実に予測する3つの条件が見出された。
1. 自身の役割を理解していること。
2. 行動する能力があると感じていること。
3. リーダーが、単に業績を評価するだけでなく、成長を促す「開発的フィードバック(developmental feedback)」を提供していること。
役割の明確さと能力は、それぞれ独立して主体性を高めていたが、開発的フィードバックがその触媒となった。能力だけでは十分ではない。知識やスキルを備えた従業員であっても、リーダーからの支援的なコーチングがなければ、受動的なままであった。
この知見は、すべての医療経営者に立ち止まって考えさせるべきものである。
沈黙の真の意味
医療機関は、従業員のエンゲージメントを測定することに多大なエネルギーを注いでいる。アンケートを配布し、燃え尽き症候群を測定し、組織とのつながりを感じているかを問いかける。これらの指標は重要だ。
だが、現場の臨床スタッフが声を上げなくなると、リーダーは「エンゲージメントが低下している」と思い込みがちだ。
それは危険な思い込みである。
多くの場合、沈黙は「不確実性」の表れであると私は考えている。声を上げる権限が自分にあるのかわからない、現状に異議を唱えるほどの経験が自分にあるのか疑問に思う、あるいは自分の意見が却下されるのではないかと不安に感じる。これらはエンゲージメントの問題ではない。リーダーシップを発揮する機会なのだ。
この研究はこの違いを実に見事に説明している。従業員は、組織を良くしたいという意欲を持っていることが多い。彼らに欠けているのは、自身の権限の明確さ、自らの能力に対する自信、あるいは行動を起こしたときにリーダーがサポートしてくれるという確信である。
医療現場にはそうした例が溢れている。病棟の看護師が非効率なワークフローに気づいても、それは運営部門の課題だと思い込む。研修医が繰り返される患者安全上の懸念を特定しても、それを変更できるのは指導医だけだと考える。環境サービス(清掃・衛生管理)の職員が危険なプロセスに気づいても、誰にそれを修正する権限があるのかわからない。
こうした人々は、誰もモチベーションが欠如しているわけではない。「許可」か「自信」、あるいはその両方が欠けているのだ。
リーダーシップの好機
この研究で最も興味深い発見は、役割の明確さや能力に関するものではなかった。フィードバックに関するものである。
研究者らは、開発的フィードバックと「評価的フィードバック(performance feedback)」を区別した。評価的フィードバックが「結果はどうだったか?」と問いかけるのに対し、開発的フィードバックは「さらに良くなるために、どのようなサポートができるか?」と問いかける。この微細な違いが行動を変える。なぜなら、評価的フィードバックは「過去(昨日)」を測定し、開発的フィードバックは「未来(明日)」を築くからだ。
医療業界において、私たちはパフォーマンス管理(評価)を非常に得意としている。ピアレビュー(同僚評価)や、死亡・合併症カンファレンス、品質ダッシュボード、年次評価などを実施している。しかし、人々に異なる視点を持たせ、課題を解決し、システムを改善するためのコーチングを行うことに対しては、それほど意図的に取り組めていない。
同研究は、開発的フィードバックが単なる励ましではないことを示唆している。それは能力を主体性へと変換する架け橋なのだ。
リーダーがアプローチを変えるべき点
現場のチームに医療を変革してほしいと願うなら、「なぜ声を上げないのか」と問い詰めるのをやめ、異なる問いを投げかけ始める必要がある。
・彼らは自身の役割の境界線を理解しているか?
・行動するための知識と自信を身につけさせているか?
・彼らの声が届くという信頼関係を築けているか?
信頼関係は、リーダーが影で誰かについて話すのではなく、困難な問題に面と向かって向き合うときに築かれる。また、フィードバックがタイムリーで具体的であり、単なる評価ではなく相手の成長を助ける目的で行われるときに築かれる。そして、リーダーが判断を下す前に真摯な関心を示し、批判する前に共感を示すときに築かれるのだ。
この研究は、私たちの多くが経験していながら、言葉にできていなかったかもしれない事実を裏付けている。当事者意識を持つように言われたからといって、人が主体的になるわけではない。誰かが自分に投資してくれたからこそ、主体的に動くようになるのだ。リーダーが期待を明確にし、能力を育み、そのアイデアに価値があることを一貫して伝えること。時間を経て、その投資が自信を生み、自信が主体性へと変わる。
リーダーシップとは、指示を待つフォロワー(部下)を生み出すことではない。自ら考える自信、行動する能力、および率直に発言できる信頼関係を備えたプロフェッショナルを育てることである。自分の役割を把握し、自分には能力があると信じ、リーダーが自分の成長に心から投資してくれていると信頼するとき、人々は「許可」を待つことをやめる。そして、それぞれが立っている場所から、主導し始めるのだ。



