第3四半期の結果は十分に悪いとは言えない
450社を超えるS&P 500企業が、第3四半期の収益を発表している。FactSetによれば、そのうちの四分の三の企業は、アナリストの収益予想を上回った。ほぼ半数が、売上予想を上回った。第3四半期の収益は、1年前から2.2%減少しており、売上は3.5%減である。
第3四半期の業績から、大いに改善されることが望まれるが、主な原因はエネルギー部門と素材部門である。しかしながら、下げ相場になるためには、収益が5%以上減らなければならないが、その可能性は低いと、リック・デベレルは語る。彼は、クレディスイスの債券と経済調査部門のグローバル・ヘッドである。彼とその同僚は、来年、米国企業は、一株あたり収益を7%近く伸ばすと予測している。
クレディスイスは、「2016 Global Outlook」の中で、次のように述べている。「収益が5%以上減少するためには、以下のいずれかが起こる必要があると考えます。
・米国のGDP成長率が、1.2%を下回る NIPA (国民所得統計と生産勘定統計)の収益データ(税引き前、投資前)が減少を示す。
・労働者が明確な価格決定権を持つ(すなわち、賃金が相当程度上昇する)
・企業に過剰投資の兆候が見られる
・利子負担が80ベーシス・ポイント(0.80%)上昇する。なぜなら、利子負担の減少が、これまでの収益改善の三分の一を占めているからである。 当社は、これらのいずれも起こっていないと見ており、従って、収益が5%減少する可能性は低いと考えます。」
クレディスイスのS&P 500の目標は、2016年半ばまでに、2,200である。それは、SPDR S&P 500 ETF (SPY)においては、220ドルに相当し、木曜日の終値から7%の上昇である。
「現在は、上げ相場の後半局面であり、株価水準、不透明なマクロ環境、ボトムアップの破壊、弱い収益動向、市場深度の減少など、株に対する逆風が強まっています。」と、クレディスイスは書いている。
「しかしながら、当社は、引き続き前向きです。なぜなら、上げ相場が、『適正』な価格で終わることは稀であり、過剰な流動性がプラスに働き、企業が引き続き非常に大きなネットでの株式の買い手でいることが出来、市場が過度に悲観的な世界成長の見通しに基づいてプライシングしているからです。」
2016年GDP成長見通し
バークレイズは、米国のGDPは、2016年には、2015年同様、約2%成長すると予測している。
「74ヶ月拡大が続いたので、米国の回復はいつまで続けられるのかとの懸念が大きくなっています」と、バークレイズは、木曜日に発表した記事で書いている。「現時点で、既に米国の戦後の景気拡大の平均である約55ヶ月を超えており、1990年代の記録的な120ヶ月の長さに近づきつつあります。当社の見解では、これは、経済が大きな景気後退で落ち込み、それ以降の回復が緩やかであり、重大な不均衡が見られないことから説明できます。
「第二次世界大戦後のこれまでの回復における平均成長率4.4%と比較して、回復は緩やかであり、平均成長率は2.0-2.5%でした。平均成長率が、当社の潜在成長率を僅かに上回るだけなので、生産ギャップが解消するのは2016年初めと見ています。
「したがって、これまでの成長期間の長さからは、回復サイクル終了と、それに伴う景気後退を正確に把握することはできないと考えています。生産ギャップがまだ解消していないことによって循環的にさらに成長する余地がかなりあり、労働市場も引き続き拡大しているので、当社は、経済に勢いがなくなり、また、資源の活用が限界に達するまで、まだもう数年間、回復が続くのが自然だと考えています。」
その間、石油価格は2016年に入っても低いままであることが予想され、消費者の可処分所得を増やすであろう。
強いドル、さらに強い米国消費者
PowerShares DB US Dollar Index Bullish (UUP)は、ドルの他の主要通貨で構成されるバスケットに対するパフォーマンスを計測するものであるが、今年は7%上昇した。それは、FRBが金利を引き上げ、他方、日本と欧州はインフレを加速するために通貨を引き下げるとの予測の下に上昇したのである。同時に、大幅に下落している石油価格のために、新興市場国やカナダやオーストラリアなどの一次産品産出国の通貨が下落した。
強いドルは、米国経済にとっては、諸刃の刃である。それによって、輸出が海外で割高となり、多国籍企業の売上と収益を引き下げる。同時に、それによって輸入品が安くなるので、米国内の消費が喚起される。健全な労働市場は消費支出を支える。米国においては、GDPのおよそ70%を消費が占める。
10月には、給与は堅調に増えており、他方、失業は少しずつ減っている。失業保険受給申請は、循環期の底に近い。時給は、1年前と比較して2・5%上昇したが、これは、2009年以来の最高水準である。パートタイム雇用は、減少した。
「消費者支出が弱くなる可能性を示す兆候は、今のところ、殆どありません」と、Northern Trustのタウンバウムとバンガロールは言う。
Part1はこちら