IEEEが2026年7月に発表した「Technology Megatrends 2030」レポートは、人間とAIの相互作用が、調査対象となった30の技術の中で最も速く広範な商業採用に至ると予測している。38カ国168人の技術・科学専門家を対象としたワークショップと調査データに基づき、専門家パネルは、インターフェースが2〜3年以内にテキストベースの入力からリアルタイムの音声・映像インタラクションへと移行すると見ている。同レポートはまた、AIリテラシーをオフィス業務、技能職、技術職における基本的な労働スキルと位置付けている。
基幹労働者たち
これとは別に、Moms Firstがマッキンゼー・アンド・カンパニーの分析支援を受けて2026年4月にまとめたレポートは、「基幹労働者(foundational workers)」と呼ばれる層に焦点を当てている。この分析は、国勢調査と労働市場データに加え、2月10日から23日にかけて実施した米国内の就労中の親1655人を対象としたオンライン調査を組み合わせたものだ。マッキンゼーの役割はデータ分析と調査知見の提供に限られ、解釈や提言はMoms Firstによるものである。
同レポートは、基幹労働者を、直接的なサービス、リアルタイムの監督、固定された勤務時間、または物理的な出勤を必要とする仕事に従事する人々と定義している。看護師、教師、小売店員、製造業の労働者、ホスピタリティ業界の従業員がこの層に含まれ、同レポートは米国の労働力の約80%を占めると推計している。こうした職種の多くは、仕事が身体的で対人的であり、文脈に依存するため、自動化の影響を受けにくい。同レポートは、2030年までこれらの職種が雇用の大きな割合を占め続けると予想している。
影響を受けにくいことは、安全であることを意味しない。AIは今後も業務内容、期待値、人員配置モデルを変えていく。しかし、この労働力の多くにとって差し迫った脅威は、機械に仕事を奪われることではない。こうした職種に働く母親が集中していることは重要である。米国国勢調査局の2018年アメリカン・コミュニティ調査によると、働く母親130万人が小中学校の教師であり、さらに110万人が正看護師だった。これらの数字は6年前のものかもしれないが、組織や地域社会が単純に止めることのできない仕事に、母親たちがいかに多く従事しているかを示している。
保育とAIの対比
Moms Firstは、保育の崩壊によって、基幹労働者だけでも年間350億ドル(約5兆5900億円)から450億ドル(約7兆1900億円)のビジネス機会が生まれると推計している。この推計には、欠勤、労働市場からの離脱、離職、就業中の生産性低下が反映されている。生産性、定着率、採用の潜在的な向上分を含めると、機会は年間500億ドル(約7兆9900億円)から700億ドル(約11兆2000億円)に上る可能性があるという。
同時に、ガートナーは、2026年の世界のIT支出が前年比14.2%増の6兆3700億ドル(約1020兆円)に達すると予測している。組織がAI能力を拡大するなか、データセンターシステムとIaaS(サービスとしてのインフラ)は最も成長が速いカテゴリーの一部となっている。
ガートナーが測定しているのは世界のテクノロジー支出であり、Moms Firstがモデル化しているのは保育崩壊による米国のビジネスへの影響だ。それでもこの対比は、組織のある前提を浮き彫りにする。企業は計算資源、クラウド容量、データセンターを容易にインフラとして扱う。しかしケア(育児)は依然として個人の問題として扱われている。
ところが、2025年3月時点で、雇用主が提供する保育給付を利用できる民間部門労働者は15%に満たない。Moms Firstのモデルでは、雇用主による各種介入の平均リターンは約5%から300%の範囲となり、個別事例では425%に達するものもあった。ただしレポートは、これらの推計はあくまで例示であり、すべての雇用主が同じ結果を得られる保証ではないと適切に注意を促している。
Chobani(チョバーニ)は従業員に年10日のバックアップ保育と、年間1200ドル(約19万円)の育児支援金を提供している。従業員の約半数がこのプログラムに登録しており、同社によれば、保育は利用率が最も高い付帯給付であった。ヒルトンは、2022年以降、ケア・ナビゲーションプログラムに3500人以上のチームメンバーが登録し、3万7000時間以上を節約したと発表している。
IEEEは、仕事のない人々と人のいない仕事が共存する未来を描き出している。技術が規模を拡大するにつれ、長期的な成功は信頼、セキュリティ、ガバナンス、そして安全な人間とAIの相互作用にかかっていると論じている。
エネルギーグリッド、コンピューティング・インフラ、人間とAIの相互作用は、2030年までに何百万人もの人々の働き方を変えるだろう。しかし、子どもが病気になり、バックアップの保育がなければ、看護師はシフトに入ることができない。工場の勤務開始から2時間後に開く保育施設を、製造業の従業員は利用できない。保育の手配よりも速く変わるシフトの中で、小売業の労働者は持続可能なキャリアを築けない。
「仕事の未来」をめぐる議論は、どの職種を技術が消滅させるのかを問い続けている。しかし、必要不可欠な仕事に従事する数百万人の母親にとって、より差し迫った問いは、保育の欠如が働き続ける能力を奪ってしまうかどうかである。企業がAIに数兆ドルを注ぎ込む中で、必要不可欠な労働者、とりわけ母親に対するより差し迫った脅威、すなわち手頃で信頼できる保育の欠如を見落とすリスクがある。



