自社でやるなら、ルール表と観点表から
読者の皆さんの会社に持ち帰るなら、要点は3つです。
費用は月数万円の桁です。AIツールとクラウド会計の利用料を足しても、人を一人採るコストとは二桁違います。
担い手は、業務を知っている人です。情報システム部門ではなく、経理の現場の人がAIを持つのが正解で、コードが書けるかどうかは関係ありません。私はいまだに一行も書けないまま回しています。書くのは日本語のルール表と観点表であり、その正体は「新人への業務説明」です。
順序は、書き出すことから。ツールを触る前に、「うちは何をどの科目で処理しているか」と「ベテランは帳簿のどこを見ているか」を書き出してみてください。それがそのままAIへの指示書になります。書けない部分が見つかったら、それは業務が属人化している箇所の正確な地図でもあります。
経理が速く、堅くなると、意思決定が変わる
最後に、なぜ私がここまで経理にこだわるのかを書いておきます。
独立前、サイバーエージェントの財務経理室でAbemaTVの月次決算を担当していました。当時7営業日かかっていた月次決算を、工程を全部書き出して詰まりをほどき、1年がかりで4営業日に縮めました。数字が「過去の記録」ではなく「意思決定の材料」に変わる瞬間を、あのとき見ました。
あの1年がかりの仕事が、いまはAIで数か月でできます。しかも、当時はできなかった「全件の一次レビュー付き」でです。私の顧問先との月次面談は、記帳の進捗確認ではなく、「この赤字はいつまで続くか」「この投資は今やるべきか」という話から始まるようになりました。数字が速く、堅くなると、経営の会話が変わります。
4か月前の記事でお伝えしたのは「記帳という作業は自動化できる」でした。今回付け加えるのは「チェックという知恵も、書き出せば一次レビューまで自動化できる」です。それでも減らないのが、判断という仕事です。作業と一次レビューが仕組みになった分だけ、判断すべき論点はむしろ鮮明に増えます。そして判断には責任が伴い、責任を引き受けられるのは人間だけです。
次にお伝えするときには、また景色が変わっているはずです。この分野の4カ月は、それくらい長いのです。

畠山謙人(はたけやま・けんと)◎公認会計士・税理士。300万インプレッションX「スタッフ0人の税理士が、Claude Codeで顧問先60社を1人で回している全手法」投稿者。「自走するバックオフィス」を提唱、60社・スタッフ0人・17時退勤のAI×税理士事務所を単身運営、経理・請求・労務のAI自動化の設計から実装までを1人でまかなうかたわら、その仕組みを他社にも紹介する活動を行う。Xアカウント: @kandmybike


