「楽観主義」
起業家としてのあなたの夢の潜在的な問題にばかり着目し、可能性には目もくれないような懐疑論者や反対論者を軽くあしらうためには、常に前向きな思考を保っていることが望ましい。
しかし、もしその反対論者たちが指摘していることが正当である場合はどうだろうか?楽観主義と単なる妄想の境界線はどこなのだろう?起業家としてそのバランスをとるのは、難しいかもしれない。もし、スタートアップ企業10社のうちの9社が倒産するとしたら、それぞれ全力を出すタイミング、アイデアを方向転換させるタイミング、そして、「これは上手くいっていないから、ここで止めよう」というタイミングが分かるためには、どうしたらよいのだろうか。
起業をしたら、まず始めに自分のアイデアとそれに対する自身のコミットメントの持続力を分析するために、3つの重要な質問を自問自答する必要がある。
質問1:あなたの商品のマーケットは存在しているか?
CB Insights(アメリカの調査会社)によると、聞き取り調査を行ったスタートアップ企業のうち46%の企業が、失敗の原因が商品のマーケットが存在していなかったからだと述べている。当たり前のことのようだが、まずは、自分のアイデアのための既存また潜在マーケットが存在することを確認する必要がある。多くの起業家は、「誰もやったことがないことなのに、マーケットが存在しているか、なんてどうすれば分かるんだ?」と首をかしげる。また、もしあなたがスティーブ・ジョブズの範に倣っているのであれば、彼は例外であり慣例ではないことを思い出して欲しい。
『Money』誌は、「人に聞いてみればいい」と書いている。マーケティング調査や、潜在顧客へのヒアリング、また業界のエキスパートとアイデアのキャッチボールをするのもよいだろう。このように、自分が正しい方向へ進んでいるのか、それとも勘違いしているのかを知るためには、いくつもの方法がある。その中で、否定的なフィードバックを受けることもあるだろう。彼らは、あなたの言っていることについて考えたことがないのだから無理もない。しかし、それでいいのだ。たとえ彼らが、あなたの提案は役に立たないと思ったとしても、あなた自身は、あなたのアイデアが人のためになるかどうかを知りたくて躍起になれるからだ。
またこの段階であなたは、別の誰かがあなたのやろうとしていることを既にビジネス化していることを知るかもしれない。 そこであなたは、どうすればもっとそのビジネスをうまくやれるか、または特許問題や採用での課題などといった今後起こり得る障害の回避方法を事前に考えておくことができる。障害があるからといって立ち止まる必要はないが、不意打ちを食らうよりは、ある程度予測しておいたほうが良いに決まっている。予習をしておけば、リスクも最小限に止められるというわけだ。
質問2:長丁場に備えているか?
今から数ヵ月後、夜11時なのにまだオフィスに残って予期せぬ市場の変化を把握しようとしているあなたは、果たして楽観的でいられるだろうか? 以下の二点がクリアできていれば、その応えは「Yes」だ。 1) 起業当初の興奮状態は、時間の経過と共に消えていくことを理解している。 2)現実的な何かに基づいて楽観的でいられるよう、充分なリサーチを行っている。
起業家のビジョンが実現しつつあるのを実感できるようになるまでには、想像以上に長い時間がかかるだろう。スタートアップ企業の経営では、ほぼ毎日、心身の忍耐力と自身のビジネス・コンセプトの価値が試される。ビジネスを成功させるためには、山のような多くの努力と困難が伴う。あなたは、それに備えておかなくてはならない。
質問3:誰が傷つくことになるのか? 苦しむ価値はあるのか?
あなたに家族がいる場合、家族との団欒ができなくて寂しいのは、あなただけではない。そして、従業員がいる場合、仮にそれが一時的なものだったとしても、充分な対価を得られていないと感じるのはあなただけではない。あなたと共にその「ギャンブル」に関わっている全員が、犠牲を払っており、可能な限り多くの見返りを受けるに値する存在である。
多くの人は、起業家のことを、何でもいじくりまわすのが好きな天才肌の一匹狼だと思っている。確かに、まだ誰も試していない新しいアイデアを思いつくというのは、時に孤独を感じることかもしれない。しかし、その試みの成功から何かを得る、または失敗によって何かを失うのは、あなただけではないことを忘れないで欲しい。
だからこそ、心の底から信じている自分のアイデアに倍賭けする前に、あなただけでなく、この大勝負に関わる全ての人たちの努力が報われるという自信を持つ必要がある。
楽観的で情熱的であるだけでは、起業家として成功できない。成功のためには、名づけて「情報通の楽観主義者」になる必要がある - 基本的に理想主義的な気質だが、充分な現実的な物事の考え方を持った人間だ。もしあなたがこのような人間であれば、あなたのビジョンに異論ばかり唱える人に出くわしても、留意すべきところと、話半分で聞くべきところが区別できるだろう。
私は別にあなたに起業を思いとどまらせようとしているのではない。ただ私は、夢を追いかける上で直面する様々な課題を乗り越えるための強い基盤を築くことをお勧めしたい。その基盤は、このシンプルな3つの質問から始まるのである。