フォーチュン500企業の最高人事責任者(CHRO)のうち、自社の人事評価制度が機能していると信じているのは、わずか2%にすぎない。100人のうち2人ということだ。
努力が足りないわけではない。現在、大企業の多くは、四半期ごとの面談、目標の評価、構造化されたフィードバックの機会など、本格的な評価サイクルを運用している。1年間の成果を一から評価するというかつての標準的なやり方は、ほぼ姿を消した。それは歓迎すべきことだ。しかし、根本的な問題は残っている。なぜなら、親近効果(リセンシーバイアス)が害を及ぼすのに、12カ月という長い期間は必要ないからだ。
四半期であれ年次であれ、マネジャーに部下の評価を求めると、記憶は直近の数週間分しか手渡してくれない。人間の脳は物事の始まりと終わりを記憶し、中間を失ってしまうからだ。そのため、評価のベースとなる記録は、最近の記憶やインボックスの検索、大まかな印象から再構成されることになる。人事リーダーたちもこの事実は認識しているが、親近効果に関する研修を行ったり、年間を通じて記録を残すよう促したりするといった従来の対策では、状況は改善しない。なぜなら、問題は「意識」ではなく「習慣」にあるからだ。
評価サイクルはジムの会員権と同じ
評価サイクルをジムの会員権に例えてみよう。会員権を買えば、器具を使い、トレーニングの日を予約することはできるが、会員権そのものが代わりにトレーニングをしてくれるわけではない。
定期的な面談の合間に、多くのマネジャーは部下の様子を記録していない。気づいたことが書き留められず、ちょっとしたコーチングの機会も見過ごされ、公正な評価に役立つはずのメモが残されない。その結果、締め切りが来ると、その当日に記憶を頼りに評価を作成することになる。これこそが、「制度があること」と「習慣があること」のギャップである。
親近効果はデザイン上の欠陥であり、人格の欠陥ではない。数カ月間の仕事を公平に思い出し、評価することを誰かに求めるのは、人間の脳の限界を超えた要求だ。定期的な評価イベントは役立つものの、それらは海に浮かぶ孤島のようなもので、その間には広大な海が広がっている。四半期に1度の対話はスナップショットを切り取るだけで、その間の数週間は記録されないまま過ぎていく。
解決策は、カレンダーに新たな予定を書き加えることではない。日々の業務のバックグラウンドで動く小さな習慣を確立し、評価の時期が来たときには、すでにその証拠が揃っている状態にすることだ。
習慣化の具体的なイメージ
習慣は、特定の状況下での反復によって形成される。南オーストラリア大学の2025年のレビューによると、新しい習慣が定着するには、約2カ月の継続的な実践が必要だという。したがって、記録の習慣を身につけるには、マネジャーが日々の業務の流れの中で、それが自然にできるようになるまで実践を重ねる必要がある。
それは記入すべきフォームというよりも、行動を起こすべきタイミングで届く、短く的を絞ったナッジ(そっと後押しすること)のようなものだ。メールやTeams、あるいは専用のアプリを通じて送られるかもしれない。重要なのは、公式な評価イベントの合間の適切なタイミングで、マネジャーにナッジが届くことだ。これらのナッジは、習慣を築くための実践の機会となる。
・チームメンバー1人に対する具体的なフィードバックを、1、2文で書き留める。
・コーチングが必要と思われる点を、実際に観察した行動とともに1つ記録する。
・面談の前に、これまでに記録した内容を見直し、取り上げるべきテーマを1つ選ぶ。
各ステップは迅速かつ具体的で、直前に起きた出来事と結びついている。小さな記録は、口座への預金のように積み重なっていく。1つの観察記録は些細なものかもしれないが、1シーズン分集まれば、年末の記憶だけでは到底及ばない、具体的で完全な全体像が浮かび上がる。また、適切な促しは、実際に対話が行われたことを確認し、そこで何に気づいたかを問いかけることで、ループを完結させる。こうして、単に仕事が行われたという事実だけでなく、そこから何が得られたかという学びまでが記録に残る。
数週間もすれば、パフォーマンスの記録は「やらされる課題」ではなく「反射的な行動」へと変わる。そうなれば、評価の時期が来ても記録はすでに完成しているため、作業はそれを再構成することではなく、要約するだけになる。
習慣化がもたらすビジネス上のメリット
パフォーマンスの記録が習慣になれば、その成果はビジネスに直接現れる。
コーチングはより的確になり、より早いタイミングで実施できるようになる。数週間にわたる具体的な観察記録を持つマネジャーは、部下の好ましくない行動を、まだ修復可能な段階で正すことができる。年末に突然評価を突きつけて信頼関係を損ね、優秀な人材を退職に追い込むような事態を防げるのだ。
目標も形骸化せずに生き続ける。毎週のようにパフォーマンスを意識していれば、四半期の目標がインボックスの底に沈むことはない。具体的かつタイムリーなフィードバックを受ける従業員は、定着率が高く、より主体的に努力し、重要な目標に向かって走り続ける傾向がある。「見守られている」という実感は副産物であり、人材の定着、忠誠心、そして測定可能な目標の達成こそが、ビジネスにもたらされる成果である。
私たちFlint Learning Solutionsの取り組みにおいて、これらすべてを機能させる鍵は、人々が予想するよりも小さなことにある。それが「ナッジ」だ。締め切り間際に人事がマネジャーを追いかけ回すのと、毎週静かに促すことで、まだ対応しやすい段階で行動を促すのとの違いがここにある。制度はスケジュールを定めるが、習慣はその日付の間の空白に宿る。
誰もが地味だと感じる解決策
人事評価管理は、行動変容の活用例としては決して華やかなものではない。製造現場の安全確保のような緊急性もなければ、売上予測のような収益に直結する魅力もない。しかし、人事リーダーたちにとっては、どの組織も抱え、すべてのマネジャーが億劫に感じ、評価フォームのデザイン変更では決して解決できなかった問題を解消できる、待望のユースケースなのだ。
年次評価に必要なのは、より優れたテンプレートでも、新しい評価尺度でもない。日々の行動として「記録すること」だ。カレンダーの予定の合間にその習慣を築くことができれば、人事が何十年も闘ってきた課題は、自然と解決に向かい始めるだろう。



