プロになって体感した言葉の「重み」
──現在は、メディア・インターネットセクターを担当しているとのこと。主にどのような企業をカバレッジされていますか。
2026年の7月からVTuber企業のANYCOLORと、カバーの主担当になりました。初めて主担当を任され、身の引き締まる思いです。
VTuber市場は、国内では1200億円、グローバルでは28億ドルを超える市場規模に拡大していて、今後も成長は継続すると考えています。例えば、アニメは一昔前までは「オタク文化」でしたが、今では老若男女、誰もが楽しむ市場に成長しています。VTuberについても、アニメのようにファン層の広がりがあれば、成長の伸びしろも大きくなると思っています。
私は最近、自らの言葉が株価を動かす「重み」を、身をもって感じました。先日、主担当として初めて主導したレポート(VTuber業界の投資戦略)を発行した際、私が「買い」の判断を示した企業の株価が、翌日のマーケットでセクター全体が軟調な局面に逆行して上昇したのです。「実績も何もない若手アナリストのレポートでも、これほどの影響を与えるのか」と驚きました。自分がマーケットに対して一定の影響力をもつ──。「アナリストとはこういう仕事なんだ」という実感が、大きな責任感と共に湧き上がってきました。
──一方で、生成AIが発展し、数値分析やモデル作成を代替しつつあります。人間のアナリストに求められる専門性とは何だと思いますか。
開示資料をもとにモデルの骨組みを作る作業は、すでにAIでもできてしまいます。しかし、そのモデルの心臓部である「前提条件をどう設定するか」という意思決定、例えば「売上高の成長ドライバーをどう置くか」「コスト構造の変化」「利益の終着点」といったストーリーや仮説を構築する部分は人間の判断力だと思っています。
どれだけAIが進化しても、人間同士の信頼関係に基づいた対話や、コンテクスト(文脈)を汲み取った解釈、その解釈をもとにした発信を完全に代替することはできません。この「人間ならではの介在価値」こそが、AI時代におけるアナリストの強みではないでしょうか。
──最後に、これからGyoseki大会に挑む学生たちや、金融業界を目指す後輩たちにメッセージをお願いします。
Gyoseki大会は、単に投資のテクニックを競う場ではありません。不確実な未来に対して論理的な仮説を立て、それを他者に伝えるという、普遍的な思考プロセスと伝える力を鍛える場です。回を追うごとにレベルが上がっていて、私自身、第1回で優勝した後に第3回大会にも出場しましたが、結果は2位でした。勝敗の結果以上に、ここで磨き上げた力は、将来どの業界に進んだとしても武器になります。失敗を恐れず、大会そのものを楽しんでほしいです。
新島虎彦◎みずほ証券エクイティ調査部アナリスト。2025年3月、東京大学経済学部卒業。同4月、みずほ証券入社、メディア・インターネットセクターのアナリストとして調査に従事。


