「伝える訓練」がアナリストとしての基礎に
──2023年、第1回Gyoseki大会の決勝で、Agentsのチームを率いて見事優勝しました。
実は、業績予想の数値そのものの正確性だけで言えば、私たちよりも精度の高いチームがあったので、1位という結果には正直驚きました。それでも1位を獲得できたのは、結論に至るまでの論理的な思考プロセスを評価していただけたからだと考えています。対象銘柄のひとつだったベネッセについては、主力事業である「こどもちゃれんじ」を分析する際、私たちは「単価×人数」という基礎的な業績のドライバーにまで分解し、コロナ禍の影響も踏まえた回復と反動の予測を積み上げるボトムアップ分析を徹底しました。
また、慣れない英語でのプレゼンテーションに備えて、想定問答集を作り込んで何度も練習するなど「伝えるための泥臭い準備」にも妥協しませんでした。プロセスも含めて全て論理的に説明できるように、チームで話し合いながら丁寧に業績予測のモデルをつくってきたので、なんとかその成果を伝えたいと思ったのです。

──その経験は、プロのアナリストとなった今、どのようなところに生きていますか。
企業の開示資料や官公庁を含めた様々な機関が出しているデータを読み込んで業績を予測し、バリュエーションを考えて、投資判断をするという部分は同じなので、その基礎を学生時代につくることができました。
そして最も重要なのは、自分の考えがいかに論理的に正しくて、素晴らしいアイデアであったとしても、相手に伝わらなければ価値はゼロになるということです。私のようなセルサイドのアナリストは業績予測をしてバリュエーションを考えるだけではなくて、それを伝えることこそが仕事なので、Gyoseki大会で自分の仮説をプレゼンして伝えることができたのは、大きな経験だったと思います。
アナリストを志したのも、Gyoseki大会を通して「これを仕事にできたら最高だよね」と思ったからです。
──逆に、学生時代と決定的に違う部分はどこですか。
決定的な違いは、情報の「手触り感」です。学生時代の情報源は開示資料を読むことがほとんどでしたが、今は決算説明会などでCEOやCFOをはじめとする経営陣の方々と直接対話し、彼らが何に自信を持ち、どこに課題を感じているかという「肌感」をファーストインプレッションでつかむことが求められています。
また、セルサイドアナリストは、特定の業界、特定のセクターを常に追っている必要があります。業績が良くなって、株価も上がれば「めでたし、めでたし」ではない。業績が悪化し、株価が下がっているときにこそ、それが一時的なものなのか、構造的な要因なのか、競合他社と比較してどうなのか、いつ回復するのかを徹底的に分析し、説明し続ける責任があります。この継続性は、学生時代とは決定的に違います。


