自動化によって日常の業務連絡は容易になっているかもしれないが、多くのビジネスリーダーは信頼やパートナーシップ、大型契約は依然として人と人が直接顔を合わせるところから始まるものだと考えている。
人工知能(AI)によって企業のコミュニケーションのあり方が大きく変わるなか、意外な傾向が現れている。多くのビジネスリーダーが、対面でのネットワーキングから遠ざかるどころか積極的になっているのだ。自動化の台頭は人と人とのつながりに取って代わったのではなく、むしろその価値を高めている。
この傾向は新たなデータによっても裏付けられている。データによると、ビジネスリーダーのほぼ3分の2に当たる62%が、AIによって人間同士の議論や意見調整の必要性が高まっていると回答している。重要な意思決定に関してそう考えるリーダーの割合は82%にまで上昇する。
対面ネットワーキングを支持するビジネス上の根拠
これは従来の手法に引きずられているだけでなく、経済的な根拠もある傾向だ。仏ホテルチェーンAccor(アコー)の調査では、対面で行う1回の会議はおよそ3回のオンライン会議に相当する効果をもたらすことがわかった。また調査対象者の35%が、対面の会議から生み出されるビジネス上の価値を考えればかかる時間や移動費は惜しくないと明言している。
言い換えると、ビジネス上のリターンが移動などに伴う負担を上回るということだ。実際、多くの創業者はビジネス上の最大の成功のいくつかはアルゴリズムや自動化ではなく、画面越しでは到底できなかった会話によってもたらされたと語っている。
取引が本当に始まるところ
オーストラリアの配管・空調事業会社Exceed Plumbing & Air Con(エクシード・プラミング・アンド・エアコン)が不動産管理会社や不動産仲介業者、その他の地元業者から獲得した契約はほぼ全て、メールや問い合わせフォームではなく対面での会話から始まっている。そして、このパターンは長年にわたって一貫していると、同社ディレクターのカレブ・ジョンは説明する。
「私たちが築いてきた見込み客を紹介し合うパートナーシップ10件のうち約8件は、突然送られてくる営業メールやLinkedInのメッセージではなく、たった1回の対面ミーティングがきっかけとなっている」とジョンは言う。「理由はデジタル上では再現できないものにある。誰かと向かい合って座れば、相手はあなたの立ち居振る舞いや、仕事について語る様子を目の当たりにする。それはどんなにうまく書かれたプロフィールでも到底及ばない形で信頼感として相手に伝わる」
その一例が、同社が獲得した、ある郊外地域の賃貸物件34戸をカバーする不動産管理契約だ。「きっかけは地元の業界関係者の朝食会だった」とジョンは言う。「会話は一度きりで、プレゼン資料もなく、フォローアップのメールもなかった。その契約は、当社が改めて正式な売り込みをすることもなく毎年更新されている。デジタルは自分たちの存在をアピールし続けるのには役立つが、『あの会社のことは聞いたことがある』という状態から、『自分の顧客を任せられるほど信頼している』という状態へと引き上げるのは対面での交流だ。そのギャップこそが、実際に取引を勝ち取る鍵だ」



