さらにそれを見破る方法
そこで終われば、研究グループはただの悪い人になってしまう。高度な回避術を提案したからには、それを見破る方法も同時に示さないといけない。そこで彼らは、デジタルカメラのオートフォーカスのためのデュアルピクセルCMOSを利用して見破る方法を開発した。
デュアルピクセルCMOSとは、すべての画素が2つのフォトダイオードで構成されたイメージセンサーだ。1つは撮影用、もう1つは位相検出用として働き、どちらも同じ可視光線で同時に撮影と測距を行い被写体の深度を推定する。
SynthIRの弱点は、映像と深度マップが、それぞれ異なる光のスペクトルを用いて作られていることと、本来は別物の映像である点だ。つまり、SynthIRの映像と深度マップにはどうしてもズレが生じる。それに対してデュアルピクセルCMOSは、同じスペクトルの光で同一の被写体のRGB画像と深度マップを同時に生成する。そのため本当に人物をカメラで撮影したのなら、双方にズレはほとんど生じないはずだ。それを利用すれば、映像と深度マップの整合性を評価できることになる。実際に実験室では、100パーセントの精度で再撮影映像を特定できた。
戦いは続く
通常のカメラで広く普及している「デュアルピクセルCMOSを使った再撮影検出方式は、ソーシャルメディアや報道をはじめとする画像や動画の真正性を確保する基盤となります」と研究グループは話す。これで、ディープフェイク問題は一段落かと思われる。
しかし、サイバー犯罪に終わりはない。悪者は、次から次へと思いも寄らない攻撃を仕掛けてくる。守るほうはいつでも不利だ。だから、このような攻撃者の立場に立った研究も必要になる。もしこの研究が敵と味方の攻防の話だったなら、映画にもなりそうな展開だ。ハッピーエンドになりますように。
出典:電気通信大学 光学フィルタを用いてディープフェイク検出器を欺く―新たな攻撃とその対策―
Breaking Infrared Recapture Detection:Optical-Synthesis Attacks and Depth-Aware In-Sensor Countermeasures


