北米

2026.08.20 08:30

企業に次々と出資、トランプ政権の「ネオ・ハミルトン主義」を読みほどく

アレグサンダー・ハミルトン米初代財務長官の肖像画は米10ドル紙幣に採用されている(stock.adobe.com)

グリアもベッセントも、そしてトランプ大統領自身も、政権の関税政策が依拠する理論の源泉としてハミルトンを引き合いに出している。だが実のところ、当のハミルトンは、関税については控えめな支持にとどまっていた。関税を設ければ消費者物価が上昇するというのが理由だった。関税よりも彼がはるかに強く支持していたのは、「奨励金(bounty)」だった。これは、現在の言葉で言えば直接的な補助金(subsidy)にあたる。

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結局、議会はハミルトンが提案した関税を成立させた一方で、補助金案については無視した。ここでこの話を持ち出したのは、2026年のアメリカが進めている産業政策は、ハミルトンの案とは似て非なるものだからである。

30社に出資するアメリカ政府

ケイトー研究所のまとめによると、連邦政府は2025年6月以降、30社にのぼる企業の株式を取得するか、取得を提案している。

始まりはUSスチールの「黄金株」だった。この特殊な株式を得たことで、アメリカ政府は同社の重要な経営判断に対して拒否権を行使できるようになった。政府は続いてMPマテリアルズに4億ドル(約640億円)を出資した。さらに同年8月、CHIPS法の補助金を振り替える形でインテルに89億ドル(約1兆4000億円)を投じ、同社の株式の約10%を取得した。現在、連邦政府はインテルの筆頭株主になっている。

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これらはどれも、アメリカの半導体設計能力自体とは関係がないように思える。この国にはデータセンターもおよそ5500カ所あり、これは次に多い国のざっと10倍だ。アメリカの企業は、世界全体のAI計算能力のおよそ80%を支配している。

アメリカ政府が買おうとしているものは何か。それは、AIや半導体などの産業の基盤になるものと、その将来を見据えたもののすべてだ。それには鉱物資源から製錬・加工能力、製造工場、まだ実用化されていない技術までが含まれる。マッキンゼー・アンド・カンパニーによると、アメリカは昨年、強靭なサプライチェーン(供給網)や国家安全保障に不可欠な「重要製造品」を1兆3000億ドル(約207兆円)相当輸入した。これらすべてをアメリカ国内で製造しようとする場合、工場の建設におよそ5000億ドル(約80兆円)を要すると試算されている。

ハミルトンならどう解決しただろか。企業の株式を買うのではなく、企業に補助金を出したかもしれない。

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翻訳・編集=江戸伸禎

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