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起業家

2026.09.07 16:15

トップ大富豪たちのリスクテイク感覚。億万長者たちの多くは世襲ではない

ジェフ・ベゾス。2025年6月27日、ヴェネチア サン・ジョルジョ・マッジョーレ島で行われたローレン・サンチェスとの結婚祝賀会で(写真:アンドレア・カルッバ/アナドル通信社=Getty Images)

2代目はなぜそれほど成功しないのか?

一方、アメリカでは毎年約500万件の新規事業が起ち上げられている。ただ、この統計値は少し紛らわしい。そのなかには、フリーランスのライター/統計学者/ポーカープレイヤーが節税目的でS法人を設立するといった事例も含まれている(あれ、もしかして私のこと?)。とはいえ、新たに起ち上げられたスタートアップの1%に本格的な成長の可能性があるとすれば、毎年5万枚の宝くじが発行されていることになる。そして、誰かが1等を引き当てる。最近の大当たりの額は桁ちがいに大きいため、その幸運な数人は、信託基金を相続した金持ちのボンボンを早々と追い越していく。

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とはいえ、赤貧の幼少時代を送るほうがいいという意味ではない。フォーブス400のリストに載る億万長者のうち、極貧家庭から這い上がった者は数えるほどしかいない。もちろん快適な生活環境で育つほうがいいに決まっているし、VCが好んで投資する人口層(たとえばヨーロッパ系やアジア系のオタク系男子)に属していることもプラスに働く。しかし生まれながらに三塁に立った人々は、えてしてリスクを回避しがちだ。「2世代目の子どもはなぜそれほど成功しないのか?」という問いをソーシャル・キャピタルのチャマス・パリハピティヤCEOに投げかけた。彼は幼少期に家族とともにスリランカからカナダに移住し、バーガーキングでアルバイトして家計を支えた。そんなパリハピティヤはこう考える。起業家である親の世代がしたがった行動基準はたったひとつで、それは「失うものなんて何もない」という基準だった。しかし、その子どもは正反対の「恥をかくリスクを避ける」という基準にしたがうことになる。「親がなんと言おうと、その子どもは『自分には失うものが多すぎる』という認識を持って行動してしまう」と彼は言う。

復讐心と、適度な社会的資本

さらに、べつの要素が成功へとつながることもある━━負けん気だ。ラックス・キャピタルのジョシュ・ウルフは、「負けん気がポケットに運気を呼び込む」という言いまわしを好んで使う。疎外感、孤立感、孤独感に苛まれ、その反動によって猛烈な競争心を抱く人もいる。思い出してほしい。VCが求めるのは、確率の低いアイデア―世間のほうがまちがっていると自身が信じるアイデア―に10年以上にわたって挑みつづける起業家だ。人をそのような行動に駆り立てるのは何か?

ニューヨークの寂れたコニーアイランドの母子家庭で育ったウルフは、その問いには共通の答えがあると私に語った。復讐心だ。「養子に出された過去かもしれないし、崩壊した家庭で育った経験かもしれない」と彼は言う。「白人ばかりの地域で唯一のマイノリティーとして育った経験、あるいは高校のフットボール部が文化の中心となっている田舎町で肥満児として育った経験かもしれない。周囲に馴染めず、好奇の眼に耐えるうちに、そのような子どもは自然と打たれ強くなる。そして怒りの感覚は彼らを落胆ではなく、いい意味での復讐へと導くんです」

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ここで、ふたつのことをはっきりさせておきたい。第一に、逆境が有利に働くのは一定の範囲内に限られる。その範囲を超えてしまうと、不利な条件が多すぎて克服はきわめてむずかしくなる。イーロン・マスクは困難な幼少期を過ごし、父親と疎遠になった。ピーター・ティールは同性愛者であることを隠しつづけて生きてきた。ジェフ・ベゾスは養子だった。しかし、この3人はある意味で恵まれてもいた。彼らは負けん気が強かったが、VC、従業員、顧客がまともに取り合うだけの社会的資本を持ち合わせていた。

第二に、かならず好ましい結果につながるとはかぎらない。競争心の炎によって建設的な道へと背中を押されることもあれば、自己破滅的な道へと追い込まれることもある。そして幼少期のトラウマは、平均すると人生に悪い影響を与えることのほうが多い。しかし、ここで取り上げているのは平均的な人ではなく、富の分布の極端な右裾に属する0.00001%の人だ。そのような場所にたどり着くのは、失うものは何もないという感覚で非合理的なリスクを積極的に取る人、世間を見返してやるという強烈な使命感に駆られた人、あるいはマスクのようにその両方に当てはまる人だろう。

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