不確実な世界で勝っている人は、何を見て、どう決断するのか。米大統領選の予測で知られる統計学者で、ポーカープレイヤーでもあるネイト・シルバーは、ポーカー大会、ウォール街、シリコンバレー、AIまで、分析的で競争心旺盛な人々が集う広大な生態系を「リバー」と名づけた。
『世界は「賭け」で動いている──期待値で未来を読むリスクテイカーたちの思考法』(ネイト・シルバー著、濱野大道訳、光文社刊)
『世界は「賭け」で動いている──期待値で未来を読むリスクテイカーたちの思考法』(濱野大道訳、光文社刊)は、その住民たちの思考と行動を追い、彼らの強さを生む発想と、その裏側に潜む過信や暴走の危うさまで描き出した一冊。本稿では、その一部を抜粋・編集してお届けする。
「トランプが勝つ確率は29%」が、実はかなりよい予測だった理由
私は2008年に情報分析ウェブサイト〈ファイブサーティーエイト〉(FiveThirtyEight)を起ち上げ、2013年まで運営に携わった。
ファイブサーティーエイトはまさに一大ブームを巻き起こした。開設当初は1日数百人だった読者が、その年の選挙投票日までに数十万人に膨れ上がった。以降、読者はさらに数千万人にまで増えた。分析サービスを提供するチャットビートによると、2016年、ファイブサーティーエイトの選挙予測ページは文字どおりインターネット上でもっとも注目されたコンテンツとなった。
とはいえ、数千万の人々が自分の予測を見るようになると、ひとつ問題が出てくる——多くがその内容をちゃんと理解してくれない。たとえば「アリゾナ州のマーク・ケリー民主党上院議員が再選される確率は66%」といったような確率論的な選挙予測は、きわめて特殊な考え方から導き出されたものだ。それは、私のような元プロ・ポーカープレイヤーにとっては世界でもっとも自然な手法だが、ほかの人々にとってはまったく異質なものとなる。
2016年11月8日、ファイブサーティーエイト用に私が構築した統計モデルは、大統領選におけるヒラリー・クリントンの勝率は71%、ドナルド・トランプの勝率は29%だと弾き出した。補足すると、トランプ勝利の可能性についてのこの予測は当時は高い数値だと考えられていた。ほかの多くの統計モデルは、トランプ当選の確率を15%から1%以下と予測した。ブックメーカー市場は、トランプ勝利の確率をおよそ6分の1(17%)と見積もっていた。ご存じのとおり、この選挙ではトランプがラストベルトの複数の激スイング・ステート戦州を制して勝利した。




