起業家

2026.08.25 13:00

デオドラントから皮膚疾患まで 「菌」で数兆円市場に挑む(福永祐一):30UNDER30

福永祐一|Taxa Technologies Co-founder,President

福永祐一|Taxa Technologies Co-founder,President

Forbes JAPAN 2026年10月号は、「世界を変える30歳未満」30人特集。30歳未満の次世代をけん引する若い才能に光を当てるアワードで、米『Forbes』が2011年より開催し、『Forbes JAPAN』でも18年から8年間で総計330人を選出してきた。

今年も4つのカテゴリから30人の受賞者を選出。SCIENCE&TECHNOLOGY部門で選出されたのがTaxa Technologiesの福永祐一だ。皮膚の菌を入れ替える独自技術で、腋臭症の悩みを断つ。約4兆円のデオドラント市場を皮切りに、福永が目指すのは、皮膚にまつわる世界共通の悩みを解決することだ。


1回塗れば効果が1週間続くスティック状のデオドラント「Swap」。その実用化を進めるのが、シリコンバレー発のTaxa Technologiesだ。脇のにおいは、皮膚の常在菌が汗の成分を分解して生じる。同社は汗を分解してもにおいを出さない「無臭菌」を作製。皮膚に定着させ、もとの原因菌と入れ替える独自技術を開発した。腋臭症は、日本で成人の1割、欧米で9割前後が該当するとされるが、Swapはその悩みを手軽に解消する。

高校時代、東大進学が当たり前とされる環境に違和感を抱き、海外進学を決意。精肉店を営む父の影響から「サラリーマンがいちばん遠い存在だった。大学で起業すると決めていた」と米ウィリアムズ大学へ進学後に、皮膚微生物を研究していたルームメイトのザビエル・シーゲルと出会い、2023年1月に共同創業した。

バイオスタートアップへの投資額が21年のピークから半減するなか、実績のない学部生が成功できる保証はなかった。そこで福永は独マックスプランク研究所の博士課程に進み、昼は実験、夜は海の向こうの投資家と資金調達の交渉を続けた。「いちばん大変な時期だった」と振り返るが、大学OBの著名起業家へ送った直筆の手紙をきっかけに出資が集まり、半年がかりの初回調達に成功した。

先行企業が技術や原料を外部企業へ提供する事業モデルで失敗していたことを教訓に、同社は、研究開発から製造、販売までを一貫して自社で担う体制を築く。25年にはオンライン薬局PillPackをAmazonへ7.5億ドルで売却したTJ パーカーを取締役に迎えるなど、事業を加速させる準備は整った。

Swapの米国向けの本格投入は、26年秋を見込む。「デオドラントは第1弾。開発で培った製造やサプライチェーンなどのアセットを、次の事業へ転用していく」と、狙った菌を皮膚に定着させる技術を応用し、アトピーやニキビといった皮膚疾患の治療薬や、蚊よけへの応用に着手。いずれも世界で数千億円から数兆円規模の市場が控える。「数年以内に皮膚の微生物がかかわる市場を押さえ、ユニコーン企業を目指します」。

世界を変えうる30歳未満にフォーカスする企画「Forbes JAPAN 30 UNDER 30」、9年目となる今年も30人の受賞者を選出。これからの未来をつくる彼ら・彼女らが描く「希望」と「新しい未来」へ、ようこそ!

【30 UNDER 30 特集号が現在発売中 / 受賞者一覧を特設サイトにて公開中


ふくなが・ゆういち◎1999年生まれ、大阪府出身。西大和学園高等学校卒業後、米ウィリアムズ大学に進学(心理学・神経科学専攻)。大学卒業後は独・マックスプランク脳科学研究所博士課程に入学・中途退学し、米国シリコンバレーでバイオベンチャーTaxaを共同創業。

シャツ33000円/サブレーションズ http://sublations.jp/、その他スタイリスト私物

文=加藤智朗 写真=帆足宗洋(AVGVST)スタイリング=鹿野巧真 ヘアメイク=MIKAMI YASUHIRO

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