Forbes JAPAN 2026年10月号は、「世界を変える30歳未満」30人特集。30歳未満の次世代をけん引する若い才能に光を当てるアワードで、米『Forbes』が2011年より開催し、『Forbes JAPAN』でも18年から8年間で総計330人を選出してきた。
今年も4つのカテゴリから30人の受賞者を選出。SCIENCE&TECHNOLOGY部門の受賞者、津田通隆はエストニアで起業し、経済産業省へ。技術開発と政策立案の両面から、日本企業が世界で戦える市場づくりに挑む。
海外のクラウドやアプリへの支払額が、海外から得る受取額を上回る「デジタル赤字」。その額は2024年に6.85兆円、35年には18兆円に膨らむとみられる。経済産業省は25年4月、この危機を産業構造から分析した「デジタル経済レポート」を公表。この執筆を主導したのが、入省3年目の津田通隆だ。その問題意識の原点はエストニアでの起業経験にある。
代々事業を興してきた家系に育った津田にとって、起業は特別な選択ではなかった。北欧に起業先進国があると知り、大学を休学し、タリン工科大学へ進学。現地で金融ソフトウェアを開発する会社を立ち上げた。そこで見えたのは、日本と世界の市場環境の決定的な違いだった。
「エストニアは小さい国なので、企業は最初から欧米市場を目指す。一方、日本は国内市場だけでも、ある程度成り立ってしまう。その違いが、世界を目指す企業の数に表れています」
ソフトウェア投資でも日本は米国に大きく後れを取る。「日本で起業しても、世界市場では勝ちにくい」。そう考えた津田は、「市場をつくる側」に回ることを決意。事業経営とソフトウェア開発の経験をもつ津田にとって、経産省は日本の産業構造そのものを変えられる絶好のフィールドだった。
「データこそが、AI時代の企業の競争力を決める」。その考えを技術としてかたちにしたのが「Open Data Spaces(ODS)」だ。企業や組織ごとに分散するデータを、AIが安全に横断利用できるようにする基盤技術である。活用されてこなかった製造現場やコンテンツ産業などのデータを競争力へと変えることを目指す。
現在、津田は経産省のIT政策実施機関である情報処理推進機構の最高設計責任者としてODSの設計・開発を主導。欧米の国際会議に招かれ、米国の先端AIの開発企業から連携の打診も寄せられた。津田の構想は政府の「日本成長戦略」や「AI基本計画」にも盛り込まれている。
「AIで競争のルールが書き換わる今がチャンス」技術開発と政策立案の両面から日本企業が世界で戦える市場づくりに挑む。
つだ・みちたか◎1997年、奈良県生まれ。大阪大学在学中にエストニア共和国タリン工科大学に留学し、フィンテック事業を起業。23年に経済産業省へ入省、「デジタル経済レポート」を執筆。現職では分散データ管理技術「Open Data Spaces」のChief Architectを務める。
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