キャリアをスタートさせたばかりのころ、あるパートナーからアレック・マッケンジーの著書『タイム・トラップ(The Time Trap)』を手渡された。そこから得た教訓は、その後の私のキャリアを形作ることになった。タイムマネジメントとは、より多くのことをこなすことではなく、自分の最高のアテンション(注意力)を何に向けるべきかを決めることなのだと、私は次第に確信するようになった。
長年にわたり、CEO、取締役、コーチ、アドバイザーとして活動するなかで、私は多くのリーダーがタイムマネジメントを「効率化」と混同しているのを目にしてきた。より優れたToDoリスト、よりタイトなスケジュール、無駄な時間の削減といったことだ。それらのツールは役に立つが、本質ではない。時間そのものを管理することはできない。時間はただ流れ続ける。私たちが管理できるのは、自らのアテンション、エネルギー、そして選択なのだ。
現代の働き方は、これをさらに困難にしている。マイクロソフトの「2025 Work Trend Index」は、「終わりのないワークデイ(無限の勤務日)」の到来を描いている。Microsoft 365を利用する従業員は、会議やメール、通知などによって平均して2分に1回作業を中断されており、会議の60%は予定されたものではなく、その場で突発的に発生したものだ。このような環境において、タイムマネジメントはリーダーシップの規律そのものとなる。すなわち、アテンション、エネルギー、そして意思決定の質を守る行為である。
私がコーチングを行うリーダーたちの間でも、毎週のようにこれを目にする。彼らは有能で意欲的だ。それでも、会議、メッセージ、開きっぱなしのタブ、通知によって1日が細切れにされている。その結果として生じるのは消耗である。
ここでは、私自身と、私がコーチングしてきた多くのリーダーたちが時間を取り戻すうえで役立った6つの実践を紹介する。
1. マルチタスクを強みとして扱うのをやめる
長年、多くのプロフェッショナルはマルチタスクを勲章のように誇ってきた。だが、私たちがマルチタスクと呼ぶものは、たいていの場合コンテキストスイッチングである。認知的に負荷の高い2つのことを同時にこなしているのではなく、注意をひとつからもうひとつへと移し、そのたびに代償を支払っているのだ。
あるリーダーは、メッセージに返信しながら取締役会資料を読み込んでいるつもりかもしれない。しかし実際には、両方の質を薄めている。隠れたコストは、失われた分単位の時間だけではない。失われるのは深さ──複雑な問題に十分長く向き合ったときに得られる洞察である。
戦略、人事判断、リスク、執筆、難しい対話など、本当に重要なことには、自分のアテンションを余すことなく注ぐべきである。
2. 中断を生む仕組みから自分を守る
各種通知はリーダーシップに摩擦を生じさせる。小さな割り込みが積み重なることで、思考の質が低下していくのだ。重要でない通知はオフにしよう。不要なタブは閉じる。ディープワーク(深い集中を要する作業)の間はスマートフォンを遠ざける。自分が対応できない時間帯を周囲に伝えておく。あなたが自分の集中力を守る姿勢を示すことは、他者に対しても同じように行動してよいという許可を与えることになる。
これは「連絡が取れない人」になるということではない。「意図的」であるということだ。リーダーは、すべてに即座に対応する必要はない。
3. 意味のある仕事には「集中スプリント」を使う
実践的な方法の1つが「集中スプリント(フォーカススプリント)」だ。毎日1時間の枠を確保することをお勧めする。その1時間で達成したい目標を書き出し、気が散る要因をすべて排除したうえで、60分間深く集中する。そして、その後はしっかりと休憩を取る。
これにより、ひとつの器ができる。漠然と「前に進めたい」と願うのではなく、始める前に進捗を定義する。意志の力に頼るのではなく、集中しやすくなるよう環境を設計するのだ。
「戦略的な仕事に取り組む時間がまったくない」と嘆くクライアントには、この集中スプリントを特に推奨している。多くの場合、戦略的な仕事はメール、メッセージ、他人のアジェンダと競合している。カレンダーに、最も価値の高い仕事のための「守られたスプリント」を1日1つ確保してみてほしい。
4. 単なる中断ではなく、能動的な休憩を取る
特に上級リーダーにとって、休憩はぜいたくのように扱われがちだ。しかし、脳と身体はつながっている。何時間も座り続け、画面から別の画面へ移るだけでは、持続的なパフォーマンスは望めない。
ハーバード・ビジネス・レビューは2024年、仕事の能力を最適化することは「利用できる時間だけの問題ではなく、利用できるエネルギーの問題である」と論じた。米国人向け身体活動ガイドラインも同じく明快で、成人はもっと動き、座る時間を減らすべきであり、どんな活動でも何もしないよりはよい、としている。
最もよい休憩は能動的なものだ。スタンディングデスクを使う。ビデオが不要な電話は歩きながら行う。負荷の高い作業ブロックの合間に、10〜15分のヨガ、ストレッチ、あるいは室内バイクを行う。時間を失っているように感じるかもしれない。だが実際には、残された時間の質を高めていることが多い。
5. 1日を「空き時間」ではなく「エネルギー」を軸に設計する
多くのリーダーが犯す誤りの1つは、すべての1時間を交換可能なものだと考えることだ。しかし、たいていの人には「フォーカスのピーク時間」が存在する。頭が最も冴え渡り、複雑な思考に適した時間帯のことだ。
早朝に最高の状態を迎える人もいれば、遅い時間にピークに達する人もいる。多くの人は午後半ばに落ち込みを経験する。重要なのは、自分自身のバイオリズムを理解することだ。ピークの時間帯は、戦略的な仕事のために守り抜こう。経費精算、ルーティンメール、日程調整といった価値の低い管理業務は、エネルギーが低下する時間帯に回す。早起きが常に答えとは限らない。重要なのは「アライメント(整合性)」だ。
6. 睡眠をパフォーマンスの基盤として扱う
タイムマネジメントの議論では、まるで生産性とは無関係であるかのように睡眠が無視されがちだ。しかし、睡眠は記憶、感情のコントロール、創造性、そして意思決定の質を左右する。疲れたリーダーもなお忙しく動き続けられるかもしれないが、忙しいことと有効であることは同じではない。
米国睡眠医学会は成人に対し、24時間のうちに少なくとも7時間以上の睡眠を推奨しているが、米国疾病予防管理センター(CDC)のデータによると、2024年には米国の成人の30.5%がそれ未満の睡眠しか取れていなかった。長期的には、睡眠不足はリーダーシップとパフォーマンスにおける深刻な問題へと発展しかねない。
自分の体内時計を知ることだ。深い睡眠、レム睡眠、そして回復のパターンに注意を払おう。深夜のメール対応が、翌朝のコンディションに影響していないか。どのようなルーティンが回復に役立つのか。スマートウェアラブルはフィードバックを得るうえで有用だが、多くのシニアリーダーにとって最も強力な生産性向上ツールは、新たなアプリやガジェットではない。夜の時間に、より健全な境界線を引くことである。
より充実した働き方
時間を使いこなすとは、あらゆる1時間により多くを詰め込むことではない。最も重要なことに、自身の最高のアテンションを向けられるようにすることだ。
これをうまく実践するリーダーは、必ずしも最も忙しい人ではない。最も明晰な人である。彼らは自分の優先順位を理解し、集中を守り、身体を動かし、エネルギーを尊重し、他者が意味のある仕事に取り組むための条件を整えている。
絶えず私たちの注意を求めてくる世界において、タイムマネジメントはリーダーシップの実践そのものとなった。問うべきは「どうすればもっと多くをこなせるか」ではない。より適切な問いは、「自分の最高の時間を与えるに値するものは何か、そして、その時間を奪うのを何に対して許すのをやめるべきか」だと私は考える。



