明るい衛星が夜空を変える
ESOの天文学者として30年以上のキャリアがあるエノーは「これまでは何とか持ち堪えてきたが、状況はますます悪化している」と指摘する。人工衛星の輝度を低下させる対策を講じている企業もあるものの、現在提出されている衛星群計画は天文学が耐えうる「限界を超えている」と、エノーは警鐘を鳴らした。
太陽光に照らされた人工衛星は、望遠鏡の画像に走る明るい光の筋を残すため、暗い銀河や地球型太陽系外惑星、潜在的に危険な小惑星(PHA)が観測不能になる可能性がある。スペースXの超巨大衛星群が原因で、南米チリにあるESOの超大型望遠鏡VLTが日没後2時間が経過した時点で撮影した画像に、人工衛星の光跡が多数できる可能性があることを、エノーの研究は明らかにした。これにより、観測可能な範囲(視野)が最大で28%狭くなる可能性がある。
衛星群は水平線の下に沈んだ太陽からの光を反射するため、最も大きな問題を引き起こす時間帯は常に日没直後と日の出直前になる。ベラ・C・ルービン天文台に搭載されているような広視野カメラは、はるかに影響を受けやすいかもしれない。明るい衛星の光跡は検出器を飽和させ、実体のない偽の光跡(ゴースト)を発生させる可能性があるため、画像が使いものにならなくなる恐れがあるからだ。
Reflect Orbitalの「オンデマンド太陽光」計画
今回の研究は、米国のスタートアップReflect Orbitalに関して特に強い懸念を提起している。同社は夜間に太陽光を提供する目的で設計された大型の鏡(ミラー)のような衛星の打ち上げを計画している。
Reflect Orbitalは間もなく試作機を打ち上げ、2035年までに衛星群を5万基に拡大することを目指している。ミラー衛星はこれまで軌道上に配置された最も明るい物体になる可能性があることが、エノーの試算で明らかになっている。
反射された光線の内側から見ると、衛星1基が満月の4倍明るく見える可能性がある。観測者を直接照らしていない場合でも、各衛星が金星と同じくらい明るく見える可能性がある。光害のある都市からでは、夜空に見える「星」がミラー衛星群だけになるかもしれない。


