欧州南天天文台(ESO)の最新研究によると、170万基を超える人工衛星を軌道上に打ち上げる計画により、「天文学に壊滅的な打撃」が及ぶ恐れがある。夜空が今より明るくなり、天の川銀河(銀河系)やその外側に広がる宇宙を観測する科学的な能力が低下するからだという。
スペースXは、既存のスターリンク通信衛星群を拡張するとともに、軌道上のAIデータセンターや宇宙空間から無線送電する宇宙太陽光発電などを追加することで、地球低軌道(LEO)における新たな経済圏の構築を目指している。現代の地上からの天文学を守るには、地球軌道上の人工衛星をすべて肉眼では見えない暗さに抑え、総数を10万基以下に制限するべきだと、ESOの研究は結論づけている。これは、地球軌道の混雑がもたらす科学的および環境的な危険性に警鐘を鳴らす研究からの最新報告だ。
人工衛星追跡サイトOrbital Radarによると現在、地球軌道上では1万7501基(※記事執筆時点)の人工衛星が稼働中で、うち1万基を、スペースXが運用するスターリンク衛星が占めている。
世界の宇宙経済の規模は世界のGDP成長率の約2倍に相当
ESOの天文学者オリビエ・エノーが主導した今回の研究では、大型で明るい通信衛星群が背景の天空輝度を上昇させ、天体観測にどのような影響を及ぼすかを初めて試算した。研究結果をまとめた査読済み論文は天文学誌Astronomy & Astrophysicsに掲載が受理されている。
2019年以降、地球軌道上で稼働する人工衛星の数は急増しているが、その大部分はスペースXのスターリンクネットワークによるものだ。今後計画されている衛星群が実現すれば、この数字はさらに跳ね上がるかもしれない。
スペースXは、スターリンク衛星2万基を打ち上げる計画を立てている。同サービスの契約数は現在、164か国で1030万件に達している。さらに、宇宙データセンター構築に向けて100万基の衛星を軌道上に投入する計画も申請済みだ。
さらにこの他、太陽光反射衛星を手がけるReflect Orbital(リフレクト・オービタル)や、衛星スタートアップE-Space(Eスペース)のCinnamon(シナモン)衛星群計画、中国の巨大衛星群構想CTC-1とCTC-2などのプロジェクトにより、さらに数十万基の人工衛星が軌道上に追加される可能性がある。
世界経済フォーラム(WEF)によると、世界の宇宙経済の規模は、2023年の約6300億ドル(約94兆円)から2035年には1兆8000億ドル(約270兆円)に拡大すると予測される。これは世界のGDP成長率の約2倍に相当する。



