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2026.08.19 10:18

AI時代、競争は敗者のためにある――地理から見るスタートアップ戦略

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先週、筆者はAIフィンテック投資に関する考え方を大きく形づくる2つの議論を交わした。

フィンテック領域で最も注目される会計分野へのAI応用について語ったあるVCは、軽い調子でこう述べた。「まともなVCなら、AI会計への投資案件をひとつも持っていないなんてありえない」

その後、ある創業者が中小企業向けのAIネイティブな保険ブローカー事業を筆者にピッチしてきた。優秀なチームで、初期のトラクションも有望だった。しかし、筆者の最初の反応は思わず口に出てしまった。「米国では同じことをやる会社が100社は出てくるだろう」(実際に調べてみると、すでに多数存在していた)。

ピーター・ティールは、競争は敗者のものだと論じた。彼の見解では、持続的な価値は独占を築くことから生まれる。これはシリコンバレーの福音となった。似通ったAI企業の多くが、結局は資金調達しているにもかかわらずである。

だが、朗報がある。この競争から逃れるための「地理的な抜け道」が存在するのだ。

米国、とりわけベイエリア(サンフランシスコ周辺)は、ベンチャーキャピタルへのアクセスにおいて圧倒的な優位性を誇っている。米国は2025年の世界のベンチャー資金の57%を獲得し、ベイエリアだけで世界のAI資金の60%を占めた。AIは、スタートアップを構築し拡大するうえでの障壁を劇的に引き下げている。

しかし、同じ戦略を他の地域で適用すれば、より興味深い展開が待っているかもしれない。サンフランシスコ・ニューヨーク軸の外でフィンテック(そしてより広くスタートアップ)を構築することには、2つの構造的優位性がある。そしてそれらは、AIによる再構築の局面において、さらに増幅されようとしている。第1は競争の少なさであり、第2はプロダクトの幅である。

100社対3社

フィンテックのカテゴリーを1つ選んでみよう。AI会計、中小企業向けAI引受、AIネイティブの保険ブローカー、給与計算、支出管理などである。

米国では、これらの各分野に複数の資金調達済み競合が存在する。スタートアップの墓場には、巨額の資金を調達しながらも敗れ去った「業界4番手」の企業が累々と横たわっている。

ラテンアメリカ、東南アジア、中東・北アフリカ、サブサハラアフリカの共同投資家やオペレーターに、実際に競争が起きているフィンテックカテゴリーはどれかと尋ねると、その数は少ない。ブラジルやスペイン語圏のラテンアメリカでは通常、有力な競合は2、3社であり、東南アジア、中東・北アフリカ、サブサハラアフリカでも同程度、あるいはさらに少ない。

標準的なベンチャーモデルは、最良の企業には最も多くの競争が集まり、そのるつぼから勝者が生まれると仮定する。資本が潤沢で人材が飽和している市場では、それは当てはまる。しかし世界的に見るとベンチャー資金のプールは小さいため、力学は異なる。有力な競合が3社しかいない市場では、正しい答えにたどり着くためのデューデリジェンス作業は同じでも、正しい1社を選び当てる確率は劇的に高くなる。

筆者はこれを直接経験してきた。以前所属していた企業では、銀行サービスが十分に行き届いていないブラジル人を対象とするデジタル銀行Neonに関わった。当時、同国で本格的なネオバンクの試みはわずかしかなかった。同社は市場を制したわけではない(Nubankに次ぐ存在だった)が、それでもユニコーンになった。同様にBNPLでは、信頼できるプレーヤーが数えるほどしかいない市場でカテゴリーリーダーとなった、メキシコのKueskiとインドネシアのKredivoに関わることができた。

この競争の計算式は、AI時代にさらに加速する。

フィンテック向けに再定義されるコンパウンド・スタートアップ

パーカー・コンラッドは、Ripplingが行っていることを表現するために「コンパウンド・スタートアップ」という言葉を生み出した。1つの突破口に集中するのではなく、複数の統合されたプロダクトを並行して構築するという考え方である。

彼は、シリコンバレーの常識に反して、幅広さは優位性だと論じた。この主張が逆張りとみなされたのは、競争が激しいためだった。米国のビジネススタックのあらゆる分野において、決済ならStripe、給与計算ならGusto、法人支出ならRampやBrexといった、特定の分野に特化し、豊富な資金を持つ既存の大手企業がすでに鎮座していたからだ。

米国外のフィンテックでは、コンパウンド・スタートアップはしばしば自然な帰結となる。筆者はOut-Innovate水平スタックについて書いたが、この機会はAI時代にはさらに強力になる。例えば、世界有数の金融サービス市場である韓国では、Tossが2015年の個人間送金から成長し、単一アプリ内で70以上の金融商品を提供するまでになった。カザフスタンでは、Kaspiが銀行、決済、Eコマースのマーケットプレイス、政府サービスを1つのスーパーアプリに統合し、同国のデジタル決済の約65%を処理している。

米国外でAIスタートアップがより容易に複合化する理由

コンパウンド・スタートアップを支える条件は3つあり、AIはそれらを強化する。

第1に、プロダクト構築のコストである。世界の大半では、特定の金融商品における既存企業は、創業40年の銀行、国有の事業者、あるいはそもそも何も存在しない状態である。もちろんスタートアップは存在するが、その密度は低いことが多い。変化したのは、AIネイティブなツールを備えた10人のチームが、かつてなら2社目、3社目の企業を必要とした第2、第3のプロダクトを、いまや現実的に構築できるようになったことだ。そしてフィンテックの導入は信頼に依存するため、新規顧客を獲得するよりも、既存顧客に次のプロダクトを販売するほうがはるかに容易である。

第2に、3D(distribution、data、delivery)のデータ優位性は、AI時代にとりわけ強力である。最初のプロダクトをうまく実行し、データの副産物を生み出すことが、第2、第3のプロダクトを触媒する。例えば、すでに法人支出を管理しているなら、AI引受を構築するのははるかに容易になる。

第3に、規制は規模に有利に働く。コンプライアンスは固定費であり、それをより多くのプロダクトに分散すればユニットエコノミクスは改善する。さらにAIは、すでにその固定費を負担しているプラットフォームにとって、コンプライアンスの限界費用を圧縮する。

AIは再構築を可能にしている。米国では、その再構築がソフトウェア史上最も混み合った環境で進んでいる。一方、グローバルなフィンテックでは、同じ再構築がこの2つの構造的優位性を伴って進んでいる。

そして、過小評価されている第3の優位性がある。プラットフォームの時間軸における先行である。ハイパースケーラーやフロンティアラボはいずれあらゆる市場に向かうだろうが、そのロードマップは英語圏と米国から始まる。世界各地のローカルプレーヤーは、その関心が到達する何年も前から、ローカルなレール上で、ローカル言語に対応し、ローカルなライセンスを持ち、ローカルな文脈に基づくAIネイティブのプロダクトを構築している。

おそらく、その時が来れば、同じようなパターンが繰り返されるだろう。Amazonがラテンアメリカに進出した際、そこにはすでにMercado Libreが強固な地位を築いていた。Uberは東南アジアでGrab、中国でDidiと対峙し、最終的にはその双方に事業を売却することになった。

初めて、構築のためのツールはサンフランシスコと同じように、メキシコシティやジャカルタでも利用できるようになった。競争は、まだそうではない。

forbes.com 原文

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