何十年もの間、企業は在庫を自社で所有することを競争上の強みとして捉えてきた。自前の倉庫、トラック、フルフィルメントシステム、そしてサプライチェーンをコントロールできれば、自社の運命をコントロールできるというわけだ。その論理は今でも多くの場合において理にかなっている。しかし、現代の市場は、過小評価されがちな形でインフラの経済学を変化させている。
今日、多くの業界がSKU(最小管理単位)の増大、利益率の圧迫、そして資本をより効率的に投下せよという圧力の高まりに直面している。企業は倉庫スペース、労務費、輸送費といった目に見える在庫コストは把握しているものの、老朽化した在庫や重複したインフラに縛られた資本の機会費用を見落としがちだ。
ある時点で、経営者は難しい問いに向き合わなければならない。すなわち、我々は顧客に実際に価値を生み出す領域で競争しているのか、それとも単に並行して資金を費やしているだけなのか、という問いだ。
ビジネスにおけるいくつかの事例は、企業がこの2つを切り分け始めていることを示唆している。製品、顧客関係、ブランドの面では引き続き熾烈に競い合う一方、インフラの領域では、協業することによってより大きな価値を生み出せるという理由から、より前向きに協力し合うようになっているのだ。
協業の実例
最も分かりやすい例の一つが、2011年にハーシー(Hershey)とフェレロ(Ferrero)が、倉庫管理、輸送、配送を網羅する北米での物流提携を結んだことだ。小売店の棚では競合関係にある両社だが、同じ顧客に向けて別々にトラックを走らせ、配送ルートを維持することは、無駄な重複を生み出しているに過ぎないと認識したのだろう。
同様の論理は、後にタイヤ業界でも見られた。2018年、グッドイヤー(Goodyear)とブリヂストン(Bridgestone)は、共同出資による流通会社TireHubを設立した。これにより、両社は市場でそれぞれ独立して競合し続けながらも、物流インフラを統合することに成功した。
この原則はヘルスケア分野でも見ることができる。2024年、バイデン政権の「がんムーンショット(Cancer Moonshot)」計画のもと、多くの医療提供者や医薬品卸売業者が、小児がん治療薬の不足に対処するためのアライアンスに加わった。これらの組織の多くは直接的な競合関係にあるが、情報を共有することで、患者へのケアに支障が出る前に医薬品不足を特定できることを示している。
これらの事例に共通しているのは、業界そのものではない。一部のインフラは、孤立した資産として見るよりも、より包括的なネットワークの一部として捉えた方が、より大きな価値を生み出すという認識だ。
協業の価値
ハーバード・ビジネス・スクールのマイケル・ポーター教授は、『ハーバード・ビジネス・レビュー』誌の論文「戦略の本質(What Is Strategy?)」の中で、「戦略とは、競争におけるトレードオフを伴うものである」と主張したことで有名だ。すべてを自社でやろうとするのではなく、成功している企業は、競争優位性を生み出す活動と、より効率的に構築できる活動とを区別している。
テクノロジーによって組織間の連携が迅速かつ低コストになったことで、この原則はさらに重要性を増していると私は考える。企業はもはや、すべての倉庫、トラック、流通センター、あるいは在庫プールを自社内に囲い込む必要はない。より重要な問いは、そのインフラを所有することが、顧客が実際に認める価値を生み出しているかどうかだ。
個々の取引としてではなく、ネットワーク全体で見ると、その経済合理性はより明確になる。ある参加者が個別の販売におけるわずかなマージンを放棄したとしても、在庫回転の高速化、資産利用率の向上、運転資金要件の低下、そして顧客維持率の強化を通じて、システム全体が恩恵を受ける可能性がある。私は、自身が経営するタイヤのECプラットフォームで、日々このような動きを目の当たりにしている。当社は約1700の倉庫の在庫を統合しているが、顧客の多くは、既存のサプライヤー・ネットワークで特定のタイヤが見つからない場合でも、顧客との関係やサービス収益を維持したいと考えている独立系の取付ショップなのだ。
最終的に、単一の取引から得られる利益だけで協業の価値を評価する企業は、将来的に何千もの取引を通じて生み出される可能性のある潜在的な価値を見逃すリスクを負うことになると私は考えている。
企業が考慮すべきこと
これは、協業が常に理にかなっているという意味ではない。企業は、製品の品質、イノベーション、サービス、顧客との関係など、顧客が価値を感じる分野においては、引き続き激しく競争すべきだ。これらこそがビジネスを定義し、顧客のロイヤルティを勝ち取る能力であるからだ。
しかし、インフラについては別の議論が必要であることを理解してほしい。
追加のインフラ投資を行う前に、リーダーは自身に3つの問いを投げかけるべきだ。
・この資産を所有することは、顧客が実際に認める価値を生み出しているか。
・もし今日起業するとしたら、この能力を自社で構築することを選ぶか。
・ここに固定されている資本は、社内の他の分野に投資すれば、より大きなリターンを生み出せるのではないか。
もしその答えが不都合なものであるなら、議論を所有から経済合理性へとシフトさせるべきだ。協業はビジネスのすべての領域に適しているわけではない。しかし、インフラがもはや顧客体験の差別化要因になっていないのであれば、それを共有することで、関係者全員の競争ポジションを強化できる可能性がある。適切な分野において、協業はインフラをコストではなく強みへと変えることができるのだ。



