欧州

2026.08.19 09:00

国防相解任から1カ月余り、ウクライナ全土に今も広がる抗議の波 国民の意図は

ウクライナの首都キーウで、同国のミハイロ・フェドロウ国防相の解任に抗議する数千人の人々。2026年8月16日撮影(Danylo Antoniuk/Anadolu via Getty Images)

夕方の抗議運動では、キーウ在住のヤナ・クリンシカが参加者向けの給水所と寄付受付所の運営を手伝っていた。その近くには、自由にメッセージを書き込める段ボール製のプラカードが用意されていた。筆者の取材に応じたクリンシカは、フェドロウ前国防相が解任された理由について、ゼレンスキー大統領から十分な説明がないことに国民が不満を募らせていると語った。

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「私たちは戦争の真っただ中にあり、戦時下で生活している。大統領の決断は非常に危険なものだった。戦時中に就任した他の閣僚と比較すれば、フェドロウ前国防相は最も適任だったと言って良い。同相の戦略は優れていた。戦略を持っていたのは、恐らく同相だけだっただろう。フェドロウ前国防相の最も重要な考えの1つは、人間ではなく無人機(ドローン)で戦うべきだというもので、私たちもこれを支持していた。これは技術戦なのだ。私たちは兵士の命を守りたいのだ」

こうした主張は、フェドロウ前国防相の解任がなぜ国民の間で大きな反響を呼んだのかを理解する助けとなる。国民にとって、同相を巡る議論は単なる人事の問題ではなく、ウクライナが最も限られた資源である人間の命を守りつつ、いかにして強大な敵と戦うべきかという問題でもあるのだ。

ウクライナ南部ミコライウ出身で現在はキーウ在住のナタリヤ・リトウシコワは筆者の取材に対し、抗議活動に毎日参加していると語った。故郷のミコライウに休暇で帰省した際も、現地の抗議活動に参加したという。「現地の活動家が私のためにミコライウの旗にメッセージを書き込んでくれた。今後はその言葉を掲げながら、ここで抗議を続ける」

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リトウシコワは続けた。「私たちは効果的な防衛を求めている。ロシアのような巨大な敵との戦争では、効率の悪い戦い方をする余裕など、私たちにはないのだから。私たちはロシアと同じペースで人材を失ったり、同国と同じ水準の汚職を許したりしてはならない。ロシアの3歩先を行く必要がある。その可能性をもたらしてくれるのは、現代的な感覚を持った国防相だけなのだ」

民主化から間もない国であるにもかかわらず、ウクライナには2004年のオレンジ革命から2013年のマイダン革命に至るまで、抗議運動の豊かな歴史がある。戦時下でも、市民による抗議活動は政府に方針転換を迫ってきた。ゼレンスキー大統領が昨年夏、国内の主要な2つの反汚職機関の独立性を脅かす法案に署名した際、抗議の波が巻き起こり、政府は方針の撤回に追い込まれた。

抗議集会に参加した非営利組織「ウクライナ医療交流・開発同盟(UA-MED)」の共同設立者ダグラス・デービスは筆者の取材に対し、フェドロウ前国防相が米実業家のイーロン・マスクをはじめとする西側の有力者と築いてきた関係を踏まえると、同相の解任を巡る論争に懸念を抱かざるを得ないと述べた。「米国人として、ロシアによる無人機攻撃が続く中、戒厳令下にあっても老若男女を問わずウクライナの人々が平和的に自らの意思を表明する姿を目の当たりにし、深く感銘を受けている。国民がここで示している平和的かつ思慮深い民主主義の実践は、ウクライナ全土に広がっている」

ロシアによる侵攻の終結の兆しは依然として見えず、若者を含む多くのウクライナ人は、この戦争が今後何年も続く可能性があることを理解している。ウクライナは人口規模や資源の面でロシアに対抗することはできない。そのため、フェドロウ前国防相の解任に抗議する国民にとって、最新技術は失うわけにはいかない兵士の命を守りつつ、ロシアとの不均衡を埋める1つの手段となっているのだ。

先述のクリンシカはこう語った。「毎日やり遂げるべき小さな使命があるということだけはわかっている。いつか私たちは真に自由になれるという希望を抱きながら」

forbes.com 原文

翻訳・編集=安藤清香

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