史上最大規模となるアンソロピックの新規株式公開(IPO)への懐疑論は、現在、1文に収まる。フィナンシャル・タイムズ(FT)は8月、その決定版と呼べる1文を書いた。
2兆ドル(約318兆円)に迫りうる評価額を正当化するため、このAI企業は2年足らずで売上高を約470億ドル(約7兆4730億円)からおよそ2000億ドル(約31兆8000億円)へ跳ね上げる筋書きを、市場に引き受けるよう求めていると伝えられている
この1文は、掲載された時点ですでに古びていた。ブルームバーグは米国時間8月17日、アンソロピックの年間換算売上高が650億ドル(約10兆3350億円)を超えたと報じた。2025年末時点と比べ、ペースは7倍を上回る。年間換算売上高を2026年5月時点の470億ドル(約7兆4730億円)から2028年に2000億ドル(約31兆8000億円)へ跳ね上げる筋書きは、投資家が根拠なく信じるほかないと言われてきた。ところが5月の数字が示されてから3カ月で、アンソロピックはその差の180億ドル(約2兆8620億円)分をすでに埋めている。
この種の数字につきものの注意点はある。年間換算売上高(ランレート)は、直近1カ月間に売れたペースを1年分へ引き伸ばした数値だ。計上済み売上高ではなく勢いを測る指標にすぎない。その勢いこそが要点である。
2028年に31兆8000億円、メタ1年分と同じ売上高
2000億ドル(約31兆8000億円)という数字は、規模の大きさだけでも立ち止まる価値がある。メタが2025年通期に計上した売上高は2009億ドル(約31兆9400億円)で、ほぼ同じ水準にあたる。創業から20年以上を重ね、1日あたり35億人を超える利用者を抱える企業が積み上げた金額だ。アンソロピックは2028年までにそこへ届くという前提で引き受けを求めている。
疑う側は、現在の650億ドル(約10兆3350億円)と2028年の2000億ドル(約31兆8000億円)との開きを、希望の問題として扱う。成長が続くという仮定以外に支えを持たない予測にすぎないとの見立てだ。桁の大きさを外して言えば、要求の中身は単純である。若い企業が残り2年でメタと同じ規模へ達するというものだ。
大半の企業なら、その見立ては妥当だろう。売上高が4倍になると予測する自動車メーカーは、まだ会ってもいない顧客について推測しているにすぎない。アンソロピックが抱える制約は逆を向いている。同社は、すでに目の前にある需要をさばききれない事態を繰り返してきた。
API事業は粗利益率80%超、下期は収益性低下の可能性
資金調達をめぐる報道は、API事業の粗利益率を一貫して80%超と伝えてきた。アンソロピック自身は2026年5月、データセンター投資が加速する下期には収益性が落ち込む可能性があると警告している。本当に来るかどうか疑わしい需要のために、設備投資を前倒しする企業はない。投資を積み増す判断自体が、需要への確信を示している。



