2026年7月、中国のスタートアップであるMoonshot AI(ムーンショットAI、月之暗面)は、トークンあたり1040億パラメータを活性化する、2.8兆パラメータの混合専門家(MoE)モデル「Kimi K3」をリリースした。同社によると、同モデルはAnthropicの「Claude Fable 5」やOpenAIの「GPT-5.6 Sol」といった米国の最先端モデルには及ばないものの、それに匹敵する高い性能を発揮するという。
そして翌8月、アリババは、一度に950億パラメータを活性化する2.4兆パラメータのモデル「Qwen3.8-Max」を発表した。このモデルは、AIモデルの格付けプラットフォーム「Arena」のテキスト部門で瞬く間に中国製モデルの最高位に躍り出て、画像タスクでも「Fable 5」に次ぐ世界2位にランクインした。両モデルともオープンウェイトである。どちらの性能も米国の最先端モデルに肉薄しており、その差は今やわずか数パーセントの範囲内にとどまっている。
議論の引き金となったのは、これら2つのモデルの登場だ。米国が今なおAI分野で優位に立っているのか、その差はどれほどなのか、全米で議論が巻き起こっている。私はAI分野に10年以上携わる中で、中国の研究所がかつて米国の戦略において二の次だった存在から、AIスタックのほぼ全域にわたって信頼に足るライバルへと成長する様子を見てきた。
わずか3週間のうちに強力なモデルが相次いで発表されたことは、中国のAI開発が米国から大きく遅れていないことを示す明らかな証拠だ。これを、単一のトップランナーを追うレースとして捉えるのではなく、スタック全体、すなわちデータセンターを動かす電力、その内部にあるチップ、それらのチップで訓練されたモデル、モデルを提供するクラウド、人々が実際に使用するアプリ、そして最終的にAIが組み込まれるロボットに目を向けると、より明確な全体像が見えてくる。
中国はすべての分野でリードしているわけではなく、すべての分野で遅れているわけでもない。特定のレイヤーで強固かつ構造的な優位性を確立しており、客観的な見方をすれば、これは単一の走者が先頭を走るレースではなく、2強による「二極体制(デュオポリー)」なのだ。



