エヌビディアのGPU向けプログラミング環境「CUDA」は、依然として最も強固な堀(競争優位性)だ。15〜20年にわたって蓄積された開発者用ツール群は、競合他社が同等のハードウェアを用意できたとしても、模倣するのに何年も要するだろう。
ファーウェイの対抗策である「CANN」は、既存の「MindSpore」フレームワークとともに2025年8月に新たにオープンソース化された。また、新しいツールチェーンにより、標準的なPyTorch推論コードの約80%が、最小限の変更でファーウェイのハードウェア上で動作できるようになると報告されている。しかし、訓練やカスタムカーネルには依然として大規模な適応作業が必要であり、CANN自体もバグが多く、CUDAほど安定していないと指摘されている。
チップの数ばかりをめぐる議論で見落とされがちなのは、訓練(トレーニング)と推論(インファレンス)は切り離されているということだ。モデルのウェイト(重み)は、その訓練に使用されたインフラよりもはるかにポータブルだ。中国のチップを用いてCANNで訓練されたチェックポイントは、他の場所にあるエヌビディアのハードウェア上で動作するようにできる場合が多い。ただし、別のプラットフォームで効率的な推論を行うには、コストのかからない簡単な移行ではなく、実際のカーネル、コンパイラ、および量子化のチューニング作業が必要となる。
DeepSeekは、この配信面の実例を示した。厳しい計算資源の制約下で訓練され、オープンウェイトとしてリリースされたモデルは、DeepSeek自身の訓練クラスタに依存することなく、世界中のプロバイダーによって適応され、提供されている。チップの格差は、訓練そのものの経済的価値(チップの売上、クラウドの売上、開発者の囲い込みなど)を誰が獲得するかという点においては極めて実質的な制約となる。しかし、そこから生み出されるモデルがグローバルに競争できるかどうかという点においては、それほど決定的な制約にはならない。


