限界は、これらのどれもが海外に進出していないことだ。「WeChat Pay(微信支付)」は25カ国以上で稼働しているが、海外のユーザーを直接獲得しているわけではなく、その大半は中国人旅行者向けである。
それでも、中国の消費者向けAIを「国内限定」と切り捨てるのは誤りだ。DeepSeekの消費者向けアプリは2025年初頭、世界のApple App Storeで一時的に首位を獲得した。これは、製品が純粋に優れていて、かつ無料であれば、世界中の消費者が中国製のAI製品であってもその実力を評価して採用することを示す証拠である。
スタックを動かす上位の力
ここまで述べてきたすべてのレイヤーの上には、それらのどこか1つに属するのではなく、すべてを同時に規定する3つの要素が存在する。
第1の要素は、「国家による調整(コーディネーション)」だ。中国の国務院は2025年8月に「AIプラス(AI+)」計画を発表し、すべての省庁や地方政府に対して一斉にAIの普及を調整・推進するよう指示した。これと並行して、その足元では補助金をめぐる激しい競争が繰り広げられている。上海市単独で約9億元のAI関連補助金を提供しているほか、中国の2026年度予算では、前年比7.1%増となる約1兆3000億元の科学技術関連の国家支出が計画されている。これは、スタックのあらゆるレイヤー、すなわち電気料金の割引、チップの補助金、オープンモデルの公開、アプリの統合などを、すべて同時に同じ目標へと向かわせる「オペレーティングシステム(OS)」のように機能する。個々の企業がほぼ独立して競合している米国には、このような仕組みは存在しない。
ただし、このような集中管理型の調整の成果については、評価が大きく分かれている。「中国製造2025」は電気自動車(EV)分野で明確な勝利をもたらしたが、半導体産業については、自給自足の目標には依然として遠く及ばない。これは、中央集権的な国家の指示が、分散型システムがもたらすような市場による自己修正がほとんど機能しないまま、巨額の規模で「間違った賭け」をしてしまうリスクも孕んでいることを思い起こさせる。


