これまで多くのガチ中華のオーナーや調理人と出会った。彼らと知り合えたことで、この夏、かけがえのない経験をした。そんな話をしたい。
それは8月2日に開催された「現代を生きる満洲族サマン映画上映 & 中国東北料理の宴in梁餐泊」というイベントである。
会場は、本コラムの「味坊集団の梁さんが茨城の農村につくった『美食とアート』の拠点を訪ねる」で紹介した、都内に17店舗を展開するガチ中華のオーナーで、中国の黒龍江省チチハル市出身の梁宝璋さんが運営する「梁餐泊」だ。
イベントで上映されたのは、同じく中国の遼寧省撫順市出身で、満洲族の血を引く金大偉監督のドキュメンタリー作品『天空のサマン』(2023年)だ (作品については「『もう時間がない』消滅寸前の満洲シャーマンのいまを追ったロードムービー」 というコラムで筆者は解説している)。
梁さんの別邸「美食とアート」の拠点
今回のイベントでは、まず『天空のサマン』を上映したのち、金監督と梁さん、筆者の3人が共有する、作品の舞台となった中国東北地方の歴史や文化、食に関するトークを行い、味坊が供する東北料理を味わうという、なかなか豪華な内容だった。
梁餐泊は、茨城県つくばみらい市の田園地帯にある味坊の自家農園の近くにあり、梁宝璋さんの別邸だ。
これまでも筆者は何度か梁餐泊を訪ねる機会があった。地元の地主から古民家を購入し、1年以上かけて改装した建物で、若い頃に絵画を学んでいた梁さんは、自らのアトリエ兼「美食とアート」の拠点にしたいという考えを持っていた。
都会から客を招いて、農園で採れたばかりの野菜や上質な羊肉(実は、梁餐泊の敷地内には、海外各地から輸入した羊肉を貯蔵する巨大な冷凍施設がある)を使った料理をふるまうだけでなく、ここを会場に美術展をやることなどを想定しながら古民家を改装したのだった。
そんな素晴らしい構想を聞いて「作品展示だけでなく、ワークショップやトークイベントなどもできたらいいね」と筆者はかねがね彼に話していたのである。
そして、梁餐泊が完成する過程を眺めていくうちに、筆者はどうしても梁さんと一緒にやってみたい企画があった。
それが、彼と同じ中国東北地方出身の金大偉監督との、まさに「美食とアート」のコラボイベントだったのだ。



