インターネットからリアルへ
Peterparker69を理解するうえで欠かせないのが、インターネットだ。彼らは、匿名性、ミーム、ネット独特のユーモアや編集感覚そのものを、音楽へ翻訳した存在だった。Jeter自身、その空気を愛してきたという。
「ネットに転がってるミームっぽいものがめっちゃ好きで。独特の質感にひかれてきました。Peterparker69の面白さって、そうしたインターネットにある面白さをそのままリアルへもち込んだところにもあると思っていて。ライブやイベントをやると、Peterparker69っぽい人たちが、インターネットのなかから実際に集まってくる」
実際、その現象はライブ会場で目の当たりにすることができる。自分たちの思い思いのファッションに身を包んだファッショナブルな若者たちが、どこからか集まってくるのだ。
「俺たちも、『どこから出てきたの?』って思いますね(笑)。普段は見ないような子たちが、ワンマンライブにはたくさん来たりする。『みんな、普段どこで何してたの?』って」
みんなが「Peterparker69らしさ」に感化され、共通のムードをつくり出していく。その求心力は、本人が思う以上に周囲には強く伝わっているようだ。22年ごろからPeterparker69の楽曲のミックスやマスタリングを担当し、制作を間近で見続けてきた同世代のアーティストphritz(PAS TASTA)は、当時のJeterについて「最初から抜けた存在だった」と振り返る。
「最初は『オルタナティブ・ヒップホップっぽいことをやっている、気のいい兄ちゃんたち』くらいの印象だったんです。でも実際にJeterさんのボーカルを聴いて、『これは違うな』と思いました。海外寄りのセンスというか、誰が聴いてもわかるくらいユニークなボーカルスタイルがあった。当時はまだそこまで知名度はなかったですけど、大きなポテンシャルを感じていました。ライブを見に行くと、パフォーマンスにカリスマ性もある。『スターになれる人だな』って。彼がステージに立っているだけで、その世界観に引き込まれるんです」
2022年2月にデビューシングルとして配信リリースした「Flight to Mumbai」。App StoreのCM「2023年は、一歩先へ。」に起用されたことで話題になり、音楽チャートをにぎわした。
Jeter自身は、「Peterparker69らしさ」を意識してつくっているわけではないという。しかし、その無自覚な感覚を一つひとつかたちにし、音楽から映像まで貫かれた世界観へと昇華していることこそが、周囲には「スター性」と映っているのかもしれない。
phritzは、続ける。
「Jeterさんは、音楽以上に、映像やアートワークといったビジュアル面に対するこだわりのほうが強いと感じることがあります。つくりたい世界観がはっきりしているんだろうなと」


