経営・戦略

2026.08.21 11:15

伝説のバンカー・大櫃が語る、伸びるリーダーの条件(第一回) PKSHA上野山勝也の「未来逆算」思考とは

みずほ銀行でスタートアップ支援を率いた大櫃直人が、東京大学発のAI企業・PKSHA Technologyの創業者・上野山勝也と出会ったのは2017年夏、同社が上場を2〜3カ月後に控えたタイミングだった。大櫃は他の若手経営者とは一線を画す資質を感じ取った。

「社会の未来像から逆算して、現在地の事業を考えている」。

advertisement

その直感は的中する。当時、売上高4億円台にすぎなかった同社は、上場からわずか2週間で時価総額1500億円を超えたのだ。現在は東証プライムへと駆け上がり、売上高200億円超を誇るAI業界の最前線を走る企業へと躍進を遂げた。

PKSHA Technologyの売上高推移、同社資料をもとに編集部作成
PKSHA Technologyの売上高推移。同社資料をもとに編集部作成



本連載は、メルカリやマネーフォワード、タイミーの黎明期をいち早く支えてきた「伝説のバンカー」大櫃直人が、自ら出会い、注目する経営者たちのエピソードを通じて、「伸びるリーダーの条件」を語り下ろす新企画。第1回は、PKSHA Technologyと代表取締役社長の上野山勝也の軌跡から、本物のAI企業を選び抜く目利き力に迫る。



上場2週間で時価総額1500億円の衝撃

advertisement

日本のAI企業のなかで、注目すべき会社を一社挙げるとすれば、私はPKSHA Technology(以下、PKSHA)の名を挙げます。2012年創業、2017年に東証マザーズ(現・東証グロース)に上場した東京大学発のAI開発企業で、現在は東証プライムに籍を置きます。

顧客企業ごとにアルゴリズムを開発するソリューション事業とその成果を製品化したAI SaaS事業を両輪とし、2025年には人材会社を相次いで買収、プロ人材の紹介や採用代行にAIを組み込む「AI Powered Worker」事業を第3の柱に加えました。国内時価総額上位100社の約7割が同社のサービスを導入し、上場直前期に4億円台だった売上収益は、2025年9月期に217億7100万円となっています。

私がこの会社に出会ったのは、みずほ銀行でスタートアップ支援を率いていた2017年の夏頃。上場を2〜3カ月後に控えたタイミングでした。

創業者で代表取締役の上野山勝也さんと初めてお会いしたのは、1対1での面談でのことでした。いまも覚えているのは、売上を尋ねたときのやりとりです。「現在の売上はいくらぐらいですか」。答えは4億から5億。実際、上場直前期の売上高は約4億6000万円、経常利益約1億5800万円でした。

数カ月後の2017年9月、この会社が上場します。公募価格2400円に対して初値は5480円。時価総額は初値の時点で700億円を超え、上場から約2週間後には1500億円に達したのです。マネーフォワードやラクスル、UUUMなど、近い時期に上場を果たしたスタートアップは、一定の売上規模があるか、赤字でも将来の売上成長がある程度見通せる会社でした。しかし、売上高4億円ほどの会社にそれだけの評価がつくのは、それまでの感覚では理解するのが難しかった。数多くのスタートアップや上場事例を見てきたなかでも、PKSHAは明らかに異質な存在であり、衝撃を受けました。

当時、AI企業の株価に相場はなく、投資家も証券会社も手探りの状態でした。それでも上場から間もなく1500億円の評価がついた理由を、私は二つ考えています。一つは、市場がAIの将来に賭けたこと。もう一つは、その賭けに足る説明を、経営チームが投資家に尽くせたことです。そして後者の力は、初回の面談で私自身が体験していました。

次ページ > 上野山の第一印象は

文=加藤智朗

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事