経営・戦略

2026.08.21 11:15

伝説のバンカー・大櫃が語る、伸びるリーダーの条件(第一回) PKSHA上野山勝也の「未来逆算」思考とは

未来から逆算し、事業をつくる

上野山さんの第一印象は、ずいぶん飄々とした人だな、というものでした。スタートアップの経営者には、自社の可能性を熱く語る人が少なくありません。ところが、彼にはそうしたところがほとんどありませんでした。

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2017年当時はAIという言葉が今ほど一般化していませんでしたが、上野山さんは、自分たちはAIという流行語に乗る会社ではなく、アルゴリズムをつくり、社会に実装する会社なのだと説明していました。その話し方がとてもわかりやすかったのを覚えています。技術者のなかには、自分の理解している水準でしか話せない人がいます。しかし上野山さんは、相手がどこまでわかっているかを見ながら、説明の粒度を自在に変えられる。難しい技術を平易な言葉に置き換えるだけでなく、その技術がどのような顧客課題に使え、どのような事業になり得るかまで話せる人でした。

技術を理解していることと、技術を事業にできることは別です。彼には、その両方がある。最初の面談で、私はそこに強く惹かれました。

上野山さんの特徴を一言で表すなら、未来から逆算して現在地の事業を考えられる人だと思います。

技術の進歩を先まで読み、その結果として産業や働き方がどう変わるのかを考える。そして、その未来に必要になるものから逆算して、いま何をつくるべきかを決める。PKSHAの事業は、そうした発想で組み立てられてきたように見えます。

長い付き合いになりますが、会うたびに驚かされるのは、話が常に「3年先」から始まり、しかも中身が毎回更新されていることです。本人いわく「データにダイブできるから」。あらゆる情報源から、産業構造や働く人の意識、資本市場の動きまで片端から取り込み、自分の言葉になるまで消化する。見ている未来が更新され、それに応じて自社の事業の捉え方も変わっているのです。

上野山さんの未来を見通す力を感じた、こんなエピソードがあります。子どもにどのような教育を受けさせているのかを尋ねたときのことです。当時はプログラミング教育が広がりを見せており、私もそうした答えが返ってくるのだと思っていました。

ところが上野山さんは、プログラミングはいずれAIが担うようになると考え、子どもをコミュニケーションや体験を重視する学校に通わせていると言うのです。

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PKSHA Technologyの上野山社長
PKSHA Technologyの上野山社長

いまではClaude Codeをはじめとしたコーディングツールも普及し、それは現実になりました。しかし彼がそう話していたのは、生成AIが登場するよりも遥かに以前、いまから10年近く前のことです。私はこの話にも、未来からいまを逆算する上野山さんの思考がよく表れていると思います。

もちろん、未来を正確に予言できる人はいません。大切なのは、一度描いた未来に固執することではなく、変化を見ながら仮説を修正できることです。PKSHAの強さは、正解を知っていることではなく、学習と更新を続ける力にあるのだと思います。

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文=加藤智朗

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