「ロシアは、自分たちが長い消耗戦を戦っていることを認識しています。また、国内ですでに不満が広がっているなか、新たな動員には政治的なリスクがあることも理解しています」。2022年にウクライナ南東部マリウポリでウクライナ側で戦い、捕虜になった経験を持つ元英軍人、ショーン・ピナーは筆者にそう述べた。「負傷した人員を再利用し、病院のベッドを空け、消耗した突撃部隊を補充すれば、負担の規模を公に認めずに戦場での数字を維持するのに役立つわけです」
とはいえ、負傷した兵士や高齢の兵士、装備の不十分な兵士を使う兵法によって、ロシア軍の戦場での成功や将来の作戦遂行能力は制限されているのが実情だ。「軍隊は(戦闘の)勢いを保つために、疲弊した兵士や負傷兵、あるいは士気の低い兵士に頼るほど、時間がたつにつれて士気や主導権、作戦の質を維持するのは難しくなってきます」とピナーは説明する。
ロシア軍が障害を負った兵士の使用を拡大していることは、欧州に対する警告にもなっている。将来、北大西洋条約機構(NATO)との戦争になった場合、ロシアは再び、膨大な人的損害を厭わず、それを吸収しながら消耗戦を続けていくという戦い方を頼みにする可能性がある。欧州側の軍隊や政府は、こうした戦争を続ける用意があるのかどうか試されることになるかもしれない。
ピナーは、負傷兵の再投入は「マンパワーが往々にして消耗可能なものとして扱われる体制を反映したものであるのは間違いない」と述べ、「このような扱いは西側のほとんどの軍隊ではとうてい受け入れられないでしょう」と続けた。


