ベルナール・アルノーは、世界で最も価値あるラグジュアリー帝国を築き上げた。そして、創業者のほとんどがあえて踏み込まないことを実行した。
成人した5人の子ども全員を、グループ内の要職に就けたのである。最初の妻アンヌ・デュヴァランとの間には、デルフィーヌとアントワーヌの2人の子どもがいる。デルフィーヌはDior Coutureを率いる。アントワーヌはグループのイメージとコミュニケーションを統括し、包括的な企業持株会社であるChristian Diorの会長を務める。
2番目の妻エレーヌ・メルシエとの間に生まれた3人の息子も、それぞれ指導的な役職に就いている。アレクサンドルはMoët Hennessyの副CEOであり、社長兼CEOのジャン=ジャック・ギオニーの直属となっている。フレデリックは2024年1月からLVMH WatchesのCEOを務め、2025年6月、Loro PianaのCEOに就任した。現在のLVMH WatchesのCEOは、ブルガリCEOも務めるジャン=クリストフ・ババンだ。1998年生まれの末子ジャンは、Louis Vuittonのウォッチ部門で開発ディレクターを務めている。
しかし、これらの事実のいずれも、投資家が本当に解決を望んでいる一つの問い、すなわち「現在77歳のアルノーがいずれ退いたとき、何が起きるのか」に答えるものではない。
FundsmithのCEOで、2020年からLVMHに投資してきたテリー・スミスは、2026年前半にLVMH株の保有分をすべて売却した。売却に関する株主宛て書簡で、同氏は中国市場の回復の弱さに加え、「一族の承継計画も懸念を強めている」と記した。
おそらく、このくすぶる緊張が、2026年4月のLVMH年次株主総会でアルノーが5人の後継候補を突然表舞台に押し出すことにつながったのだろう。同総会では、それぞれのリーダーが担当部門の業績と戦略を発表することを求められた。会合でベルナール・アルノーは投資家に対し、85歳に達した時点で承継に注力する意向だと述べた。



