経営・戦略

2026.08.21 11:00

世界最大のラグジュアリー帝国LVMHが直面しているのは「後継者問題」ではない

Florence Piot - stock.adobe.com

そこから、Moët Hennessy社長のアラン・シュヴァリエやLouis Vuittonのアンリ・ラカミエとの提携により、1987年に持株会社LVMHが築かれた。その後、2011年に同族企業Bulgariを傘下に収めるまで、約40年にわたり買収を継続。これらの買収により、同グループはラグジュアリー市場を支配する多国籍コングロマリットへと成長した。

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事業文化は、判断力、タイミング、リスク選好に表れたアルノーの起業家としての才覚を中心に築かれ、システムは彼の意思決定を軸に発展した。重要なのは、事業拡大において機能してきたものが、次世代への移行を準備する今後の事業において機能する可能性は低いという点である。

なぜ「誰が本命か」は間違った問いなのか

プーツィオウリスは、創業者が果たさなければならない転換を、起業家的リーダーシップからスチュワードシップ(信託・管理)への移行として捉えている。「創業者が年齢を重ねるにつれ、課題は起業家的リーダーシップからスチュワードシップへと移る。有能な後継者のために余地をつくりながら、家族の結束と事業の継続性を守ることだ」

この転換は、言葉ほど簡単なものではない。創業者は単なるCEOではなく、父親でもあるからだ。誰をリーダーに選ぶかは、必然的にどの子どもを最も気に入っているかを選ぶこととして受け止められる。そして、その判断を誤った場合の余波は、取締役会の内側にとどまらない。それは古くからある物語であり、『Succession』のような作品の人気によって拍車がかかった、名家をめぐる物語と不可分に結びついている。

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現実の人生では、その紆余曲折はしばしばはるかに複雑で痛みを伴い、ステークホルダーや顧客から絶えず注視される。元プロサッカー選手であるベッカムの一家は、長男ブルックリン・ベッカムに関する法的著作権を両親が保有していることをめぐる親子間の対立で、たびたび見出しを飾ってきた。

ファミリービジネスのリーダーたちと数十年にわたり仕事をしてきたなかで、筆者が一貫して目にしてきたのは、資格と正統性を取り違える判断が非常に多いということだ。優れた学歴は価値があるが、それだけで次世代が事業全体のリーダーたちから信頼を得られるわけではない。

違いを生むものは何か。ファミリービジネスの外での経験と露出、若い世代が懸命に働き、他者に耳を傾け、新しいアイデアや新鮮な発想とともに謙虚さを持ち込む意思があることを示す証拠だ。正統性は、入口に掲げられた家名からではなく、次世代がプレッシャーと不確実性の下でどう成果を出すかから生まれる。そして、グローバル企業が上級職により多くの人材を引きつけるほど、そのガバナンスは血筋より能力を重んじることを目に見えるかたちで示さなければならない。そうでなければ、その人材を丸ごと失うリスクがある。

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