OpenAIは広告事業を畳み、TBPNを戦略部門に置いた
本稿冒頭で挙げたOpenAIによるTBPN買収は、戦略上の狙いをより見えやすくする。買収額が数億ドル(数百億円)規模とされる一方、TBPNが番組の広告で得ていた収入はその何十分の1にすぎず、通常のメディア買収として金額の説明がつかないからだ。
TBPNが立ち上がったのは2024年で、クーガンとヘイズが作り上げた。毎日3時間の生放送はテック業界で瞬く間に定番となり、マーク・ザッカーバーグ、サティア・ナデラ、サム・アルトマンといった顔ぶれをゲストに引き寄せた。
米ニュースサイトAxiosは、ウォール・ストリート・ジャーナルを引用し、TBPNが2025年に500万ドル(約7億9500万円)の広告収入を見込んでいたと報じた。外部投資家を入れずに黒字であり、OpenAIの傘下では広告事業を畳むことになるとも伝えている。
OpenAIが公表した理由は、鋭い編集感覚と視聴者への深い理解、そして影響力のある人物を一堂に集める実績を備えたチームを買ったというものだ。同社はTBPNを戦略部門に置き、各国政府や社会との折衝を統括するグローバル渉外責任者のクリス・レヘインの下で運営させる体制をとった。
広告事業を畳み、対外的な発信や折衝を担う部門の下へ置くという配置から、筆者はOpenAIの狙いをこう読む。単体で採算を取るメディア事業としてよりも、対外発信を担う実働部隊、人材を集める供給源、そしてAIをめぐる日々の議論に加わる場として評価している。買収によってOpenAIは、信頼される番組を一から築く時間と不確実性を省いた。
ハントはTBPNの制作水準を認めつつ、買収額には疑問を示す
ハントは、TBPN買収がクリエイター全般にもたらす意味を歓迎した。ただしHubSpot自身の物差しで見れば買収額には疑問があるとも述べている。なお発言に出るクリエイターエコノミーとは、個人が自ら媒体を持ち、視聴者から直接収益を得る経済圏を指す。
「TBPNがやったことは素晴らしいと思うし、クリエイターエコノミーにとっても素晴らしい。ジョンとジョーディは優れた才能だし、TBPNの制作水準は見事で、優れたゲストも呼んでくる」とハントは語った。「それが買収額に見合う価値なのか。OpenAIにとっては見合うのかもしれない。当社なら、あの規模と、注目や影響力をどう評価するかを踏まえて、ああいう取引はおそらくしなかっただろう」。


