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2026.08.19 14:15

AI時代に組織を強くする「RQ(関係性知能)」とは|社会イノベーションの最先端の教養 第6回

Motoko - stock.adobe.com

リレーショナル・フィランソロピーでは、応募前から対話し、互いの役割や期待を話し合う。報告や評価を、管理や監視のためだけではなく、共有された学びと改善の機会として捉える。問題が起きたときには、直ちに資金を止めるのではなく、何が起きているのかを共に理解し、対応を考える。さらに、資金提供者も、自らの判断や行動について説明責任を負う。説明責任を、資金を受け取る側だけに課す一方向のものではなく、相互的なものとして捉え直すのである。

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この視点に立てば、デューデリジェンスの意味も変わる。問題のある組織を選別し、資金提供者のリスクを避けるためだけではなく、相手の現実を理解し、よりよいパートナーシップを築く機会として捉える。問題を見つけたら落とす審査では、問題のない組織ではなく、問題を見せない組織が選ばれるかもしれない。組織上の課題が見つかったとき、「資金を出せない」と判断するだけでなく、「その課題を乗り越えるには、どのような資金や伴走が必要なのか」と考える。デューデリジェンスを、疑いの見定めから、共に成果を生み出すための理解へ変えるのである。

RQが関係を築く力をめぐる議論だとすれば、リレーショナル・フィランソロピーは、それを審査、報告、評価、説明責任、意思決定といった制度として実装する試みだといえる。

RQが企業に投げかける問い

もちろん、資金提供者とNPOの関係を、企業の現場にそのまま当てはめることはできない。一方で、資源や権限を持つ側が条件を決め、もう一方が評価される構造は、企業のなかにもある。評価される側が、相手に都合のよい情報だけを伝え、問題の報告や相談が遅れる。こうした状況に対して、報告項目を増やし、管理を厳しくすれば、問題は解決するのだろうか。あるいは必要なのは、悪い情報や異論を早い段階で共有しても、関係が直ちに壊れないという信頼なのだろうか。

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関係性を重視するとは、懇親会を増やすことでも、上司が部下に優しく接することでもない。互いを知る機会をつくり、その場で率直に話せるよう、評価や意思決定の仕組みを見直す。力を持つ側も、自らの行動が相手に与える影響に責任を負う。そして、問題や対立が起きたときには、関係を切るだけでなく、修復する道を残す。

ソーシャルイノベーションやフィランソロピーの領域で進む議論は、ビジネスセクターに答えを教えるものではない。しかし、多様な主体との協働が不可欠な時代に、成果を生み出す条件を考えるうえで、多くの示唆を含んでいる。

AIによって、多くの仕事は効率化されていくだろう。それ自体は歓迎すべき変化である。しかし、その過程で、仕事を通じて人と関係を築く機会まで手放していないだろうか。RQが投げかけるのは、「人間関係を大切にしよう」という精神論ではない。どのような関係を必要とし、それを生み、維持し、修復するために、どのような仕組みをつくるのか。そして、力の差によって、誰かの声が失われていないかという問いである。

成果は、優れた個人の内側だけから生まれるのではない。異なる人々が、都合の悪い現実や意見の違いを共有し、それでも関係をつなぎ直す。その「人と人のあいだ」から生まれるものもある。RQやリレーショナル・フィランソロピーの議論は、AI時代の企業や組織に、効率化によって生まれた時間を何に使い、どのような関係性を意図的に残すのかを問いかけている。

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「スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー」は、非営利団体、財団、企業、政府、関心を持つ市民など、世界中の社会変革リーダーによって、社会変革リーダーのために執筆されてきたグローバルマガジンです。2003年にスタンフォード大学内で創刊されて以来、グローバルおよびローカルな社会課題に取り組む多様なセクターの人たちが、これまでになかった新たなソリューションを見つけ、前進することを後押しする研究と実践に基づいた最高の知見を提供しています。日本版は大学院大学至善館インパクトエコノミーセンターが運営しています。
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文=井川 定一(スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー・ジャパン副編集長)

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