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サイエンス

2026.08.25 18:00

400歳のサメが教える「老化の真実」、心臓はボロボロでも現役で動く理由

ニシオンデンザメ(stock.adobe.com)

ニシオンデンザメの心臓は、顕微鏡で確認すると確かに老朽化しているように見える。にもかかわらず、個体そのものに衰えの兆候は見られない。研究対象となった個体は、捕獲直前まで活発に回遊し、捕食行動を行っていた。心臓組織には、急性損傷を受けた形跡もなければ、広く細胞死が起きている兆候も見られなかった。分子レベルの損傷が数世紀にわたり蓄積しているにもかかわらず、ニシオンデンザメは何ら支障なく生存していた。

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それはどうしてなのか。

これまでの老化研究では、「組織損傷の予防」に焦点が当てられることが多かった。動物が長生きするのは、何らかのかたちで酸化ストレスや組織変性を回避しているか、時間が経っても「若い」細胞を維持しているからだ、というのが有力な説だった。ところが、ニシオンデンザメはそれとはまったく異なる可能性を指し示しているように見える。もしかしたら長生きとは、必ずしもダメージに抵抗することではなく、ダメージを許容することを意味するのかもしれない。これは、いわゆる「レジリエンス(回復力・適応力)」という考え方だ。

医学の分野で「レジリエンス」とは、ストレスや損傷を受けても機能を維持する力を意味する。この現象を体現しているのが、100歳を超えて長生きしている一部のヒトで、加齢に伴う疾患を抱え、体内には分子レベルの損傷が蓄積していても、体が想像をはるかに超えて機能し続けられることを示している。ニシオンデンザメが長生きできるのは、このレジリエンスが常軌を逸したレベルに達しているからのようだ。

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研究では、ニシオンデンザメと2種の動物との比較も行われた。一つはクロハラカラスザメ(学名:Etmopterus spinax)だ。深海に生息しており、ニシオンデンザメよりもずっと小さく、寿命はおよそ10年と短い。もう一つは、アフリカに生息するターコイズキリフィッシュ(学名:Nothobranchius furzeri)で、寿命が最も短い脊椎動物の1種だ。

これら2種については、ニシオンデンザメと同様の、広範にわたる心筋線維化も、リポフスチンの大量蓄積も見られなかった。ということは、心筋線維化もリポフスチン蓄積も、単に深海での暮らしや、魚であることが招いたものではなく、むしろ、並外れて長生きできることと具体的に結びついている可能性がある。

さらに目を引くのは、酸化ストレスの証拠だ。研究では、ニシオンデンザメの心臓には、活性酸素種に起因する細胞ダメージと関連する分子マーカー「3-ニトロチロシン」が大量に蓄積していたことがわかったのだ。

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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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