一部のSPV販売業者は、すでに法的なトラブルに直面している。今年1月、ニューヨークのSPV仲介業者3社が共謀と詐欺の容疑を認めた。SPVを通じて取引されるプレIPO株の価格をひそかに上乗せして何百万ドルもの手数料をせしめながら、1000人以上の投資家から1億8500万ドルを調達していたとされる。その1カ月前には、自身がアクセスできないアンドゥリル株を保有するとうたったSPVの持ち分を販売したとして、司法省がニューヨークの男性を詐欺罪で起訴した。
目下、SPV市場は米国のあらゆる地域から新規参入者を受け入れているようだ。そのひとりがアーカンソー州フォートスミスのマックス・エイブリーだ。彼は、ルーマニアの地方都市で武器商人をしたり、建設系起業家として苦戦したりした後、最終的にSPV事業者になったという。今は非公開市場がビジネスの場だ。暗号資産管理プラットフォームと、投資家同士がSPV案件の情報交換をするメンバー数1万5000人のディスコードコミュニティを運営している。誰でもSPVで資金調達や投資ができると訴える書籍も執筆した。
エイブリーをはじめとするSPVの熱狂的な推進論者たちは、SPVの持ち分のトークン化が助けになりうると考えている。たとえ原資産の株の譲渡が制限された場合でも、投資家は、ブロックチェーンに裏付けられたSPVの所有権と紐付いたトークンを売却できるようになるからだという。アンソロピック株と関連付けられた複数の暗号トークンはすでに取引されており、その価格に基づく同社の推定評価額は1兆ドルを超えている。
話題を呼びそうなアイデアであり、善意からの発想であろうが、詐欺事件や盗難事件にまみれ、制御機能が事実上存在しない暗号資産の歴史を考えると、トークン化すれば事態は悪化するだろう。とんでもない状況にとんでもない手段を投入しても、真っ当な市場にはならない。暗号資産とトークン化が救世主なるとでもいうのだろうか? やれやれである。


