競争力あるリターンを求める資本は、低いリターンを許容する資本よりも、エネルギー転換に大きく貢献する可能性がある。
エネルギー転換への資金調達は、本質的にタイミングの問題である。一般的なベンチャーファンドは、資本を投じてリミテッド・パートナー(LP)に返還するまでに約10年の期間が設けられている。しかし筆者の観察では、電力、重工業、食料を実際に脱炭素化する技術が規模を拡大して投資を回収するには、15年から25年かかることが多い。20年かかる技術を10年期限のファンドで支援すれば、成果が出るずっと前に資金は尽きてしまう。優れた企業の不足以上に、おそらくこのギャップこそが、どの気候ソリューションが実装され、どれが研究所の中で消え去るかを決定づけている。
現在の気候関連資金の投資先を見れば、そのギャップは明らかだ。資本は10年以内にエグジット(投資回収)できるものを追い求めているからである。2025年の気候テック投資総額は405億ドル(約6兆4400億円)に増加したが、その成長はレイターステージの資金調達ラウンドや、AIおよびデータセンターに関連するエネルギー案件に集中した。その一方で、ハードテクノロジーへのシードおよびアーリーステージの資金調達は減少した。気候関連資金におけるアーリーステージの比率は、2021年の約20%から8%未満へと急落しており、大手ファンドは太陽光や風力といった実証済みの技術への資本集中を続けている。資金は、すでに機能しているものへと流れ、これから発明されるべきものからは遠ざかる傾向にある。
この現象は今に始まったことではない。マサチューセッツ工科大学(MIT)によると、ベンチャー投資家は2006年から2011年にかけてクリーンテックに250億ドル(約3兆9800億円)以上を投じたが、その半分以上を失った。
一般的な解決策は、投資回収まで何年も待つことを厭わない資金である「ペイシェント・キャピタル(辛抱強い資本)」とされる。しかし、辛抱強さそれ自体が解決策になるわけではない。なぜなら、それにはまったく異なる2種類があり、気候ファイナンスはその2つを混同し続けているからだ。
産業を築く「辛抱強さ」
第1のペイシェント・キャピタルは、そもそも利益を上げることを期待していない。政府の補助金や、利益を生まないかもしれない未実証のアイデアに対する財団の賭けなどがこれに該当する。これは不可欠だ。まったく新しい科学を研究室の外へ出す役割を果たすからである。
第2のものは、同じように待つ用意はあるが、勝つことを明確に期待している。難度の高い技術を、赤字を出し続ける長い初期段階から支え、成熟した時点で力強く競争力あるリターンを得ることを目指す。これこそが、有望な発明を実在する産業へと変える資金である。どちらも重要だが、気候ファイナンスは第2の資金が切実に必要とされている場面で、第1の資金を投じ続けている。
この第2の資金を供給すべきお金は、その役割からほぼ離れてしまっている。通常の投資家が手を出さないような、世界を変える企業に資金を提供するために生まれた金融分野であるインパクト投資は、1兆5700億ドル(約250兆円)規模のビジネスへと成長したが、その過程で、そうした通常の投資家と同じように振る舞い始めた。現在、ほとんどのインパクトファンドは通常のファンドと同じリターンを目指しており、ほぼ同等の頻度でそれを達成している。目標が同一になった時点で、インパクトは単なるラベルとなり、新技術が依存するリスクの高い初期資金は乏しいままである。
太陽光発電がすでに示した勝ちパターン
この第2の資本が機能するという証拠はすでにある。これまでに私たちが経験したクリーンエネルギーにおける最大級の成功例の一つである、太陽光発電を考えてみよう。太陽光は、ライバルの大半を駆逐した2000年代のクリーンテックブームから生まれ、世界の電力市場を席巻するに至った。その大きな要因は、化石燃料よりも劇的に安価になったことにあるだろう。製造規模の拡大、政府の支援、そして激しい価格競争により、太陽光発電のコストは2009年以降で約88%低下し、世界のほとんどの地域で最も安価な新規電源となった。生き残った企業の多くは、補助金なしでも化石燃料に価格で勝てる企業であり、彼らは厳しい時期を持ちこたえながらも、真の成果を要求し続けた投資家たちに支えられていた。
同じことが再び起き始めている。バッテリー価格は2010年以降で93%下落し、グリーン水素はかつて太陽光が位置していた初期の高コスト段階にある。次の気候技術の波は、おそらく太陽光と同じように資金提供を受けるだろう。待つだけの忍耐を持ちながら、最終的にはこれらの企業がコスト面で競争に勝つことを求める規律ある投資家によってである。低いリターンを許容することが太陽光を築いたわけではなく、次に来るものを築くこともおそらくない。
ファンドの修正だけでは答えの半分にすぎない理由
答えの一部は、ファンドそのものを作り直すことにある。10年という期限は選択の結果であり、一部の政府系ファンドやファミリーオフィスは、15年または20年にわたって投資を保有できる、より長期のファンドを組成し始めている。
もう一つの手段である「ブレンデッド・ファイナンス(混合金融)」は、政府や慈善団体の資金を用いて最もリスクの高い初期損失を吸収し、それによって民間投資家が追随できるようにする仕組みだ。この手法により、2024年には気候プロジェクトに155億ドル(約2兆4600億円)が投じられたが、これは中国を除く発展途上国が2030年までに必要とする年間約2兆4000億ドル(約382兆円)という規模に比べれば、端数に等しい。間違った時間軸で構築されたファンドを、どのような政府政策も救うことはできない。
もう一つの要素は、マインドセット(意識)の変革である。気候投資は良いことをしているのだから収益が低くても仕方がないという信念は、多くの場合、常識として定着してしまっており、最悪のタイミングで実害をもたらしている。気候はいまや、あらゆる真剣な事業計画に含まれる項目となり、2024年の世界全体の気候被害は1兆4000億ドル(約223兆円)に達している。より強靭な送電網、水システム、沿岸防御によってその被害に備えることは、この10年で最大級の投資カテゴリーの一つになりつつある。
筆者の組織では、食料・農業からエネルギー、インフラ、輸送に至るまで、支援するあらゆる領域で同じパターンを目にしている。世界規模で重要となる企業は、最終的に利益を生み出せる企業である。なぜなら、利益こそが、成長に必要なエンジニアや製造パートナー、そしてその後の追加資金を引き寄せるからだ。
洪水対策からよりクリーンな鉄鋼に至るまで、次の気候ソリューションの波は、おそらく太陽光が切り拓いた道をたどるだろう。華々しさのない年月を経て、コストが急低下し、市場全体を塗り替える。そうした期間を企業に渡らせる資本は、不確実な年月を通じてその場にとどまり、最後まで基準を保ち続けた資本である。結局のところ、最も信頼できる気候インパクトの形は、競争力あるリターンなのである。



