6月17日の覚書からは、紛争の主要な争点について交渉する意思があることを示唆する兆候が見られた。濃縮ウラン備蓄の希釈、制裁緩和、ホルムズ海峡の開放などが、段階的な取引の対象とされたのだ。これは、ウクライナを巡ってクレムリンが提示した「ゼロサム(訳注:一方が全てを得て他方が全てを失う)」方式の領土要求とは異なる。
3月のイスラエル軍によるイランのサウスパース・ガス田や首都テヘラン近郊の製油所への空爆後、同国はペルシャ湾岸諸国のエネルギー施設に対する報復攻撃を強めたが、米国が交渉開始を発表すると、その勢いは衰えた。今月初めにも同様の展開が見られた。トランプ大統領は計画していたイランに対する大規模攻撃を中止した。これは、外交的な打開を見据えてイランや周辺諸国が米国に自制を求めたためと報じられているが、米軍の兵器の不足も一因だった可能性がある。いずれの場合も、積極的な攻撃は、交渉を有利に進めるための意図や強さを示す「代償を伴う信号」として機能し、交渉の過程で次第に収束していった。
現在の威嚇と緊張緩和の繰り返しも、取引的な性質を帯びている。トランプ大統領はこれまで何度も偽りの「レッドライン」を引き、交渉の切り札として文明を破壊するような攻撃をちらつかせたかと思えば、直ちに撤回して「合意間近だ」と宣言してきた。イランの首席交渉官であるモハンマド・バゲル・ガリバフ国会議長は、これを「終わりなき茶番劇外交」とやゆした。専門家は、こうした威嚇の応酬が繰り返されることで脅しの信ぴょう性が低下し、事態の不透明さが増すと警告している。とはいえ、米国の目標は相手を屈服させることではなく合意に達することにあるため、同国軍の作戦はウクライナで見られる消耗戦ほど破壊的ではない。一方、イランに関しては、革命防衛隊の高官らが最近、最高指揮官の地位に就いたことから、広範な地域紛争を継続する姿勢がうかがえる。
今後の展開
行き詰まりを打開するために激化したかと思えば、協議の進展に伴い緩和される攻撃は、合意に至る可能性の範囲が狭くとも実在することを示唆している。一方、外交的な動きがない中で激化し、民間人の生活基盤や戦争遂行能力に直接的な打撃を与える攻撃は、単なる交渉上の優位性の確保ではなく、相手側を疲弊させることが目的である点を示している。
ロシアの今後の判断は、石油精製能力の低下や石油輸出の減少、多数の死者や国内の供給網の混乱といった事態が政治的に耐え難いものとなるかどうかに懸かっている。クレムリンが当面、交渉の席に戻ることを否定しているため、現時点での答えは「否」のようだ。
米国にとってイランとの紛争は、同国軍を標的とした、交渉を促すための攻撃によって特徴付けられている。交渉の停滞が長引けば、イランはペルシャ湾岸諸国のエネルギー施設への攻撃を再開し、それ以外の地域にも軍事作戦を拡大する恐れがある。とはいえ、米国とイランの間には圧倒的な軍事力の差が存在する。イランのエネルギー生産や輸送を無力化することは米国にとって強力な切り札となるが、世界の原油価格への影響を考慮すれば、この切り札を実際に使用することには慎重にならざるを得ないだろう。


