FIFA(国際サッカー連盟)は、ワールドカップなどの大会を運営する新たな商業子会社の株式の一部(過半数未満)を民間投資家に売却するという物議を醸していた提案を、金曜日に撤回した。この方針転換は、世界各地のサッカー団体からの激しい反発と、欧州サッカー連盟(UEFA)加盟の55の国・地域連盟によるFIFA主催大会へのボイコットの脅威を受けたものだ。
FIFAのジャンニ・インファンティーノ会長は声明のなかで、方針を撤回した理由を次のように説明した。「あらゆる意見に注意深く耳を傾けた結果、このプロジェクトは、支持の度合いにかかわらず、もともと設定していた目的にかなわない性質の分裂を生み出してしまったことが明らかになった。私たちの目的は、これまでも、そしてこれからも、結束し、向上させることである。したがって、この提案は進めないこととする」
FIFAの撤退は、ビジネスリーダーにとってタイムリーな教訓となる。ボイコットの脅威は、組織が物議を醸す決定や計画を再考せざるを得ない状況を素早くつくり出しうる。しかし、経営陣がいつ、どのように対応すべきかは、その脅威の背後に誰がいるのか、どれほどの支持を集めているのか、そして無視した場合にどのような結果を招く可能性があるのかによって異なる。
経営陣がそうした脅威にどう対処するかは、企業の規模や性質によっても変わり得る。「Facebook上で不満を募らせた数人の退職者が二度とそのカフェに行かないと誓うことと、欧州のすべてのナショナルサッカーチームがボイコットを決意することとの間には、大きな違いがある」と、PRコンサルタントでホップスコッチUSAのビジネスディレクターを務めるローラ・クロンプトンは、筆者とのインタビューで語った。
あらゆる危機と同様、組織が対応するスピードは重要な要素である。「問題が企業の意思決定、指導者の発言、あるいは社会問題のいずれに起因するものであれ、最初の24〜48時間でどう対応するかが、事態がエスカレートするか落ち着くかを決定づける」。コー・コミュニケーションズのCEOでフォーダム大学のマーケティング非常勤教授でもあるステイシー・ロス・コーエンは、筆者宛のメールでこう語った。
ボイコットに対応する前に企業がすべきこと
ボイコットへの対応を公表する前に、経営陣は、その脅威となっている行動に実際の勢いがあるかどうかを見極め、その背後にいる人々や不満の内容を理解し、組織やステークホルダーに及ぼす影響を評価する必要がある。
「ボイコットの脅威に直面したとき、企業が対応するスピードは重要である。しかし、それ以上に重要なのは、どれだけの理解をもって対応するかである」と、TJM & Co. Media Boutiqueの創業者兼CEOであるティファニー・ジョイ・マーチソンは、筆者宛のメールで助言した。
彼女は、ボイコットに関する企業の声明を出す前に、「ボイコットを警告しているコミュニティや集団の歴史や文化、および何が引き金になったのかを深く掘り下げる」ことを推奨している。「当事者たちがなぜそのような反応を示しているのかを理解することは、差し迫った危機を和らげ、管理するために不可欠である」
しかし、ボイコットの脅威すべてに公的な対応が必要なわけではない。「企業はまず、その脅威に実際の勢いがあるかどうかを見極める必要がある。誰が背後にいるのか。顧客は注目しているのか。売上、従業員、重要な取引関係に影響し得るのか。あまりに早く対応すれば、限定的な対立をはるかに大きなニュースに変えてしまうことがある。時には、まったく対応しないことが最も賢明な対応となる」と、アンコモンの創設者であるネカ・エトニルは、筆者宛のメールで語った。
その勢いを測るには、SNS上の投稿数を単に数えるだけでは不十分である。経営陣は、誰がボイコットを組織しているのか、影響力のあるステークホルダーが参加している、あるいは参加する可能性があるのか、支持がどれほど速く広がっているのか、そしてその論争が売上、従業員、投資家、取引先に影響を及ぼし始めているのかを検討すべきである。
スターバックスやマクドナルドを含む複数の企業が、労働問題や世界情勢、その他の論争を理由に、自社製品のボイコットを求める声に直面してきた。フォーダム大学のコーエンは「不満が妥当なものであるかどうかにかかわらず、沈黙したり、一貫性のないメッセージを発したり、単に反応するだけだったりすれば、他者に物語を形づくらせることになる。それは、他人に書かせたい物語ではないはずだ」と指摘する。
ただし、沈黙は自制と同じではない。企業は、公の対応を発表しないと決める一方で、状況の監視を続け、従業員に説明を行い、顧客向けの回答を準備し、目に見える対応の引き金となる展開を特定することができる。
目に見えないボイコット
企業をボイコットすることを決めた消費者は、企業の経営陣からはほとんど見えない場合がある。APCOが実施した新たな調査によると、「特に注目すべきは、消費者による最も一般的な圧力をかける手段が、最も目に見えにくいものであるという点だ。調査対象者の3割近く(31%)が、友人や家族にその企業から製品を買うのをやめるよう勧めると回答しており、公のチャネルではなく、個人のネットワークを通じてネガティブな感情を広めている」という。
これに対し、「企業に直接連絡する」は22%、「組織的なボイコットに参加する」は21%、「SNSにネガティブな投稿をする」は16%だった。APCOのシニアディレクターであるジナ・ロイヤルティによれば、「言い換えれば、企業が公の批判だけを監視している場合、レピュテーション(評判)への影響を過小評価している可能性がある」という。
これは、企業のリーダーにとって盲点となる可能性がある。なぜなら、ボイコットが企業に打撃を与えるために、ニュースのヘッドラインを飾ったり、デモを引き起こしたり、SNSで拡散されたりする必要はないからだ。消費者同士のプライベートな会話が、経営陣が監視するような警告サインを出さないまま、購買の決定に徐々に影響を及ぼすことがある。
この調査結果は、ボイコットの脅威に対する中立的な対応として沈黙を守ることのリスクも浮き彫りにしている。対象者によっては、対応を拒むこと自体がレピュテーションや商業的な面で独自の代償を伴う可能性がある。
世論における支持政党の違いが、ボイコットへの対応をさらに複雑にする可能性がある。騒動に直面した際の企業の沈黙を正しいアプローチとみなした割合は、共和党支持の回答者の半数近く(45%)にのぼったのに対し、民主党支持者ではわずか24%だった。
APCOの調査によると、ボイコットによる商業的な影響は現実のものであるが、予測するのは難しい。調査対象となったアメリカ人の4割以上(43%)が、対応が必要と思われる問題に対して沈黙を守り続ける企業からの購入を停止する可能性が高いと答えた。組織をボイコットする傾向は、支持政党による差が小さく、民主党支持者で48%、共和党支持者で40%だった。
反射的な対応を避ける
ビジネスリーダーは、ボイコットの脅威に対して反射的な対応を取ったり、SNS上の雑音に自らの行動を左右されたりすることを避けるべきだ。それよりも、組織にとって最も重要なステークホルダーに焦点を当て、その対応が組織の価値観や長期戦略と一致するようにすべきだと、カーネギーメロン大学テッパー・スクール・オブ・ビジネスのビジネスマネジメント・コミュニケーション准教授であるカーラ・ベビンズは、筆者とのオンラインインタビューで語った。
ビジネスリーダーは、実際にボイコットに直面するまで、その脅威にどう対応するかを決めるのを待つべきではない。さまざまなボイコットのシナリオを想定して対応を訓練しておくことで、企業は最悪のシナリオが現実となった際に、貴重な時間を節約し、必要に応じてリソースを適切に配分することができる。
ボイコットは、単なる広報活動(PR)の問題ではなく、本質的にはリーダーシップにおけるコミュニケーションの課題である。「組織は決定そのものを擁護することに集中しがちだが、ステークホルダーはリーダーがその決定をどのように伝達しているかも評価している。結果に同意しない人々であっても、リーダーがその決定の背景にある理由を説明し、考慮されたトレードオフを認め、あらゆる対象に対して一貫したコミュニケーションを行っている場合、その組織を信頼できるとみなす可能性が高くなる」とベビンズは指摘する。
事前準備には、物議を醸す決定や計画を変更する権限を誰が持つのかを決めておくことも含めるべきである。コミュニケーションチームは対応策を提案することはできるが、ボイコットの脅威を引き起こした行動を組織が守るのか、修正するのか、撤回するのかを決定できるのは、上級幹部、あるいは場合によっては取締役会だけである。
FIFAの方針転換は、最大規模の組織でさえ、信頼性のあるボイコットの脅威を退ける余裕はないことを示している。ビジネスリーダーにとっての課題は、一時的な怒りと持続的な反対を見分けること、そして決定や提案を守ることが、それを変更または撤回するより大きな損害をもたらし得る時を見極めることである。



