ギャラップが「State of the Global Workplace 2025」レポートを発表した際、見出しとなった数字は4380億ドル(約69兆6000億円)だった。世界の従業員エンゲージメントが1年間で低下したことによる、生産性損失のコストである。その原因は、現場従業員のエンゲージメント低下ではなかった。マネジャーのエンゲージメントが30%から27%へ低下し、それが全体を押し下げたのである。
これは、説明責任の所在を示す具体的なシグナルであり、多くの組織が投資に最も消極的だった階層、すなわち中間層を直接指し示している。
3つのプレッシャー、増えぬ支援
DDIの「Global Leadership Forecast 2025」(50カ国、1万人以上のリーダーが対象)によると、リーダーの71%が1年前よりもストレスが大幅に増えたと回答している。40%は現在の役割を離れることを積極的に検討している。2026年に向けて、人事部門が掲げる最優先課題はリーダーシップ開発である。
2026年のミドルマネジャーは、チームのAI統合を担うことを求められる一方で、出社回帰をめぐる摩擦に対応し、さらに、そうした変数が一切考慮されないまま設定された業績目標を達成しなければならない。これらはそれぞれ、組織全体を巻き込む取り組みである。企業はそれらを同時並行で、同じマネジメント層を通じて進めており、その層が負荷を吸収することを期待している。
複合化する構造問題
こうした圧力が高まる以前から、マネジメント層はすでに縮小していた。Live Data Technologiesは、AIを活用した階層削減を背景に、近年、マネジャーの人数が6.1%減少したことを記録している。ガートナーは、この傾向が加速すると予測している。2026年までに、組織の20%がAIを使って組織構造をさらにフラット化し、対象企業ではミドルマネジメント職の半数以上がなくなる見込みだ。
その縮小の後に残るマネジャーは、より広い責任範囲を担うことになる。チームの規模は拡大し、AIと人間の協働ワークフローは複雑化し、周囲のマネジャー仲間は減少する。そうしたマネジャーに、その高度な役割を担うスキルがあるのか。組織は彼らを育成するために何かをしているのか。この問いには、データが必要性を示すほどの投資がなされていない。
DDIによれば、組織の80%は自社のリーダーシップ・パイプラインに自信を持っていない。この数字は、仕事そのものの構成が大きく変化した期間を含む、DDIの3年連続の調査でほとんど動いていない。
スキルのミスマッチ
AIの登場に対して、組織は主に技術研修(AIリテラシー認定、プロンプトエンジニアリング講座、プラットフォーム導入プログラムなど)で対応してきた。こうした投資は、個々の業務レベルでは正当化できる。しかし組織レベルで見れば、的外れな制約に対処していることになる。
AIが吸収しつつある業務、すなわち進捗確認、定型的なコミュニケーション、データ集計、業績モニタリングは、まさにこれまでマネジャーの時間を奪い、組織が本来彼らに求めている高次の仕事への従事を妨げてきたものだ。高次の仕事とは、戦略的な統合、成長を促すコーチング、真の曖昧さの中での意思決定、そして組織の文脈を十分に読み取り、それに基づいて行動することである。
AIが業務処理のレイヤーを担うようになると、残るのは関係性と認知のレイヤーである。そしてそれこそが、多くのマネジメント開発プログラムが歴史的に投資不足だった領域だ。
DDIは、リーダー自身が最大のスキルギャップとして「戦略の策定」と「変化のマネジメント」の2つを挙げていることを明らかにした。現在、育成計画でこれらの領域を優先している人事チームは22%にすぎない。組織は、AIがまもなく不要にする業務に向けてマネジャーを準備しており、AIが再現できない業務に向けて準備しているわけではない。
移行に本当に必要なこと
マネジャーからリーダーへの移行には、スキル習得よりも根本的なものが関わっている。それは、曖昧さをどう処理するか、自分なりの見解をどう構築するか、正式な権限なしにどう影響力を築くか、そしてあらゆる挫折を自分個人への否定と受け止めずに、プレッシャー下で成果を維持するかである。
こうした能力は、リーダーシップの認知的・心理的側面への継続的な投資を通じて培われる。しかし多くの組織はこうした投資を「任意」と分類するか、より測定しやすい研修成果を優先して後回しにしている。
データは、組織がある程度このことを理解していることを示している。リーダーシップ開発は、複数年にわたって人事計画調査で最優先事項の座を維持している。それでも80%はなお、自社のパイプラインに自信を持てていない。掲げられた優先事項と実際の組織能力との隔たりは、説明責任がどこで停滞しているかを明らかにしている。そしてそれは、人事部門が必要性を認識できていないことにあるのではない。
説明責任を巡る決断
DDIによれば、マネジャーが定期的に成長機会を設けない場合、ハイポテンシャル人材が1年以内に離職する可能性は3.7倍高くなる。この数字は連鎖的に膨らんでいく。自ら成長しないマネジャーは、その下にいるすべての部下にとっての「限界(天井)」となり、育成されていないマネジメントの天井が積み重なった結果が、組織内部から見た「80%のパイプライン不信」の正体なのだ。
ギャラップの4380億ドル(約69兆6000億円)という数字は、主に従業員エンゲージメントの見出しとして流通している。だがより正確に言えば、これはマネジメント開発における会計上の問題だ。従業員エンゲージメントを向上させる主要なレバーは、その従業員を管理する人々の能力、自信、そして労働条件を改善することにある。
マネジメント層を、育成すべき「能力の層」としてではなく、最適化すべき「コストセンター」として扱う経営陣は、明確な戦略的決断を下していることになる。その決断がもたらす代償(離職リスク、パイプラインの脆弱化、エンゲージメント低下)を示すデータはすでに存在しており、年を追うごとにより具体的になっている。組織がそのデータをどう扱うのか。そしてその決断について誰が責任を負うのか。それこそが、調査では答えが示されない問いである。



