AI関連株を持つだけで報われた時代は終わり、選別が始まる
AIブームでは長らく、関連銘柄を持っていること自体が報われてきた。投資家は、基盤を支える半導体メーカー、容量を積み増すクラウド企業、電力をまかなう電力会社、生産性向上を約束するソフトウエア企業を、そろって買い求めた。設備投資が膨らむことは、しばしば商機が広がっている証拠として受け止められた。
次の局面では、もっと厳しい選別が求められるはずだ。
半導体メーカーは高い利益率を前提に評価されている。クラウド企業は、膨大なAI業務が設備投資を正当化してくれるかのような勢いで支出している。モデル開発企業は、急速な成長と将来の価格決定力を織り込んで評価されている。ソフトウエア企業はAIで利益率が上がると見込む一方、その顧客はAIが費用を下げてくれると見込んでいる。
これらの期待は互いに張り合っている。投資家がいつまでも見ないふりを続けられるとは、私には思えない。いずれ市場は、投じられた資本すべてに対し、誰が納得できる利回りを稼いだのかを判定しなければならなくなる。
数字がすでに巨大であるため、アンソロピックはこの議論を表舞台へ引きずり出しうる。同社は3800億ドル(約60.4兆円)という評価で300億ドル(約4.8兆円)を集めた。そのわずか数カ月後には、9650億ドル(約153.4兆円)という評価で650億ドル(約10.3兆円)を調達している。そして今度は、次の成長段階に市場価格を付けてほしいと、公開市場へ求めようとしている。
初値が20%上がるかより、売上高が現金に変わるかを見る
だから私なら、上場初日に株価が20%跳ねるかどうかに費やす時間はぐっと減らし、熱狂が冷めた後で何が起きるかを調べる時間をはるかに増やす。売上高がどれだけ現金に変わるか。そのうちどれだけを計算資源へ戻さねばならないか。競合モデルが良くなるにつれ、価格はどう動くか。最先端にとどまるため必要な資本から、アンソロピックは十分な利回りを得られるか。この4点が、初日の売買よりはるかに大きな意味を持つ。
これはアンソロピックへの反対論ではない。これらは、この規模の評価額に必ずついて回る問いである。
アンソロピックは最終的に、2兆ドル(約318兆円)に迫る評価額を正当化するかもしれない。この成長を見れば、投資家はその可能性を真剣に受け止めざるをえない。ただし公開市場で株を買う株主は、投資家が615億ドル(約9.8兆円)と値付けした2025年3月に買うわけではない。3800億ドル(約60.4兆円)だった2026年2月でもない。彼らが買うのは、途方もない成功がすでに積み上がった後であり、そのぶん投資リスクが置かれる場所は変わってくる。
長年にわたり、AIをめぐる易しい問いは、この技術が重要になるかどうかだった。アンソロピックIPOは、投資家がより難しい問いに答えねばならない、まさにその時に到来する。半導体が買われ、データセンターが建ち、電力が供給され、競合モデルが良くなった後、採算を手にするのは誰か。それが問いだ。アンソロピックは、AI時代を代表する偉大な企業になるかもしれない。それでも公開市場で買う投資家は、提示された値段を払ってなお、その将来が自分たちに十分残るかどうかを、自ら見きわめなければならない。


