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2026.08.15 23:58

CEOの「AI過信ギャップ」が企業に数十億ドルの損失をもたらしている

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2017年3月8日、ドイツ北西部ブレーメン大学の人工知能(AI)研究所で、ロボットが調理鍋からボウルにポップコーンを注ぐ。同研究所の科学者らは「人間規模の日常的な操作タスクを実行するロボットエージェント向けのAIベース制御手法」などに取り組み、「家庭、職場、余暇活動で人間を支援するコンピューティングシステム」を研究している。(Photo by Ingo Wagner / dpa / AFP via Getty Images)

クラウドストレージ大手「Box(ボックス)」のCEO、アーロン・レヴィは、AIを導入する大半の経営幹部層をむしばむ症状に「AIサイコーシス(AI精神病)」という名前を付けている。経営陣は現場のワークフローから遠く離れた場所にいるため、AIツールを試す際、うまくいく筋書き(ハッピーパス)だけを目にする。プロトタイプの後、エージェントが持続的な成果を出すまでに必要となる10ないし20の工程を見ることはない。洗練されたデモと本番運用に耐えるシステムの間にあるギャップこそ、企業のAI投資の大半が消えていく場所である。

レヴィの診断はデータにも裏付けられている。S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスによると、2025年に企業の42%がAIイニシアチブの大半を断念した。前年の17%から大きく増加している。平均的な組織は、AIの概念実証(PoC)のほぼ半分を本番環境に到達する前に打ち切った。その残骸の中でなお残っている企業に、いま本当の資本が流れ込んでいる。

資本は注視している

ベンチャーキャピタル(VC)はAIエージェントへの信頼を失っていない。ただ、どこに賭けるかを再調整しただけだ。調査会社マーケッツアンドマーケッツ(MarketsandMarkets)によると、エージェント型AI企業は2026年の最初の4カ月で44ラウンド、26億6000万ドル(約4230億円)を調達した。前年同期の10億9000万ドル(約1730億円)を大きく上回る。エージェント型AIスタートアップの平均調達ラウンド規模はほぼ倍増し、1億5500万ドル(約246億円)に達した。投資家は、デモ段階の目新しさではなく、年間経常収益(ARR)が1億ドル(約159億円)を超え、本番運用に耐える信頼性を示した企業に資本を集中させている。

世界のAIエージェント市場は2025年に78億4000万ドル(約1兆2500億円)と評価され、2030年には526億2000万ドル(約8兆3700億円)に達すると予測されている。だが投資家はもはや、CEOが熱心にプロトタイプを説明するだけで小切手を切ることはない。2026年に1億5000万ドル(約239億円)超のラウンドを調達している企業は、大規模環境で一貫したタスク完了、監査証跡、ガバナンス基盤を示せる企業である。レヴィの表現を借りれば、彼らはラストマイルを解決したのだ。

このテーゼは下流にも浸透している。VC Cafeの2025年市場分析によると、エンタープライズAIの売上高は2025年に370億ドル(約5兆8800億円)に達し、前年比で3倍超に成長した。投資家はいま、「レイヤーケーキ」型の投資仮説を語る。基盤モデルはインフラ投資、垂直型アプリケーションは短期的に最大のリターンを生む領域という見方である。勝ち残っている垂直領域は、ラストマイルの作業が明確に定義され、規制され、信頼性に対して企業が対価を払うほど重要性が高い分野だ。

プロトタイプは製品ではない

あるCEOがAIエージェントで契約書を生成し、それを成功と呼ぶ。そのCEOがしていないことがある。相手方に送る前にすべての条項を検証すること、整合性を保つために過去の契約書をすべて連携させること、幻覚(ハルシネーション)によって生成された1つの条項が負債になるのを防ぐレビュー・ワークフローを構築することだ。レヴィはXにこう書いた。「見ろ、契約書を生成した」。だが「相手方に送る前にすべての条項を検証しておらず、過去の契約書をすべて接続して機能させる必要もなかった」。

このパターンはコードにも当てはまる。CEOがプロトタイプを出荷し、感銘を受ける。それを引き継いだエンジニアはコードをレビューし、エッジケースを特定し、デプロイ前に問題を修正し、保守の負担を引き受ける。CEOが見たのは製品であり、エンジニアが見たのは、それを本番対応にするために必要な作業だった。

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この認知的距離は、組織上の役割の結果である。CEOは設計上、ラストマイルの実行から切り離されている。問題は、AIツールがほぼあらゆるものについて説得力のある初稿を作ることに極めて長けており、上級幹部がAIに触れる場面のほとんどが、本番ワークフローの混沌とした中間工程ではなく、管理されたデモに限られていることだ。

研究もこれを裏付けている。米シンクタンクのランド研究所(RAND Corporation)は、AIプロジェクトの80%超が失敗しており、その失敗率は非AIのテクノロジープロジェクトの2倍だと報告している。マッキンゼー・アンド・カンパニーの2025年の調査では、AI導入により有意義な財務的リターンを得ていると回答した組織は、モデリング手法を選択する前にエンドツーエンドのワークフローを再設計している割合が2倍高かった。

使う量を減らすのではなく、増やせ

レヴィの処方箋は、CEOはAIをもっと使うべきだというものだ。撤退するのではない。ただし、使い方が重要である。AIでアウトプットを生成することと、AIを使ってシステムを理解することは同じではない。健全な導入判断を下せる経営者は、AIツールを十分に深く使い込み、デモには現れない失敗、エッジケース、下流の依存関係に遭遇した人たちである。

レヴィはこう書いている。「CEOとしてできる最善のことは、AIを大量に使い、企業におけるエージェントの本当の影響を見極めることだ。そしてその過程を経て、上振れの可能性と、そこに必要となる実際の作業の両方を理解することだ」。これには商業的価値がある。エージェントを本番投入するために必要な取り組みの全体像を理解する創業者や企業の買い手こそが、合理的な賭けをしているからだ。それ以外の人々は、潜在的な墓場に資金を投じているにすぎない。

レヴィ自身、この点について一貫している。2025年10月のTechCrunch Disruptで登壇した際、彼はミッションクリティカルな業務プロセスには、決定論的システムと確率論的AIの間に「政教分離」が必要だと主張した。データ漏洩や予期せぬデータベース変更など、現実に起きたエージェントの失敗例を挙げている。エージェントへの熱意は妥当だが、それを支えるガバナンス基盤はまだ構築途上にあることを認識する必要がある。

本当の賭けはどこにあるのか

市場は二極化している。一方には、経営陣がデモを見て予算を承認し、いま本番環境でエージェントが失敗する様子を見ている組織がある。もう一方には、導入概要を書く前にラストマイルの作業を洗い出し、エージェントを信頼できるものにするために必要な人間によるレビュー層、データガバナンス、ワークフロー再設計を構築した、より少数の企業群がある。

投資家はこの違いに注目している。調査会社ガートナーは、2027年までにエージェント型AIプロジェクトの40%超が中止されると予測している。アナリストのアヌシュリー・ヴェルマは、その大半が誇大宣伝(ハイプ)に動かされ、組織が実際の導入の複雑さを見えなくしていると指摘した。2026年に大規模なベンチャー資金を獲得している企業は、ラストマイルの信頼性を後付けではなく自社プロダクトそのものにした企業である。

この領域で事業を構築する創業者にとって、レヴィの枠組みはポジショニングの機会を示している。すなわち、最初の1マイルに資金を出す経営者に、ラストマイルを可視化するツールである。投資家にとっても、フィルターは同じくらい明確だ。どのCEOにもデモを求めればよい。その後で、本番環境のインシデントログを見せてほしいと求める。その2つの会話の距離に、本当のリスクが存在している。

forbes.com 原文

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