1966年2月、米『タイム』誌は、近い将来に「肉体労働者だけでなく、秘書や大半の中間管理職もコンピュータに取って代わられるだろう。残された経営陣が、主要な意思決定や長期的な方針策定を担うことになる。ある予測によれば、働くのは全人口のわずか10%にすぎず、残りの人々は実質的に、何もしないでいることに対して報酬を支払われることになる」と予測するエッセイを掲載した。
ところが、未来へと向かう道中で不思議なことが起きた。コンピューターによって仕事が消えることはなかった。むしろ、新しい種類の仕事や機会を、それも数多く生み出したのである。真夜中を過ぎてもプロジェクトを仕上げようとパソコンに向かっている人や、飛行機の中でレポートと表計算に埋もれている人に聞いてみればいい。コンピューターは誰をも忙しくさせ、9時から5時までという枠を大きく越えさせた。
最近、特に人工知能(AI)の波が押し寄せるなかで、あらゆる人がコンピュータに取って代わられるという議論が再燃している。しかし、データも、そして常識も、まったく異なるストーリーを語っている。それは1966年2月のあのエッセイのあとに実際に展開された世界に近いものだ。
ベンチャーキャピタルのアンドリーセン・ホロウィッツ(Andreessen-Horowitz)のパートナー、デビッド・ジョージもその一人で、AIは私たちの視界の外にある新たな役割や機会を徐々に明らかにしていくと見ている。今の労働市場の状況は映画の「静止画」ではないと、彼は最近のノートに記している。むしろ、それは絶えず進化し続ける世界だ。イノベーションと技術進歩は、既存のやり方を単純に1対1で置き換えることで進んできたわけではない。AIが人間の仕事を単純に1対1で置き換えていくという前提は「想像力の重大な欠如であるだけでなく、基本的な観察の欠如でもある」とジョージは指摘する。
彼は自身の主張を、米国国勢調査局、米国労働統計局、ドイツ銀行、ゴールドマン・サックス・リサーチ、カーライル・アナリシス、エール予算研究所(Yale Budget Lab)などのデータ豊富な報告書で裏付けている。そのいずれも、差し迫った雇用の「黙示録(終焉)」を示す証拠は示していない。
確かにAIはタスクや仕事を変えていく――それは想定内だ、と彼は続ける。「変革的技術が解き放たれるとき、労働市場の形は常に変化する。しかし、AIが経済全体に恒久的な失業を生み出すという主張は、役に立たないマーケティングであり、粗悪な経済学であり、それ以上に粗悪な歴史観だ」
これらの発言を行っているデビッド・ジョージが、いまやAI主導のベンチャー投資で世界をリードする企業のパートナーであることは念頭に置くべきだ。当然、こうした立場に伴う新たなイノベーションへの一定のポジティブな姿勢はある。それでも、彼の視点はこれからの10年の経済を最前列から眺める視座を提供してくれる。
同様のテーマは、先月インタビューしたテスラ元幹部のジョン・オニールも語っていた。現時点では私たちはAIの「一次的な影響」までしか見えていない、というのだ。AIの二次的、三次的な影響はまだ大きな未知だが、人々が新しい、そしておそらく産業を変えるような用途や応用を発見していくにつれて、必然的にその姿を現していくだろう。
証拠はデータに表れている。現時点で、「エクスポージャー、自動化、拡張のいずれの指標も、雇用や失業の変化と関連している兆候はない」とジョージは述べる。同時に、AIと雇用に関する利用可能なデータはまだ不完全でもある。
ジョージが引用したエール予算研究所は、AIが現在の労働市場に与える影響についての予測は「大半が推測の域を出ない」と述べている。今のところ、データは「経済全体における大きな混乱ではなく、おおむね安定を示している。AIに関連する職種の構成変化は過去よりも速いペースで進んでいるようだが、著しい変化というほどではない」という。
ジョージは、雇用喪失に関する今日の過剰な不安の多くを「労働量固定の誤謬(lump-of-labor fallacy)」と呼んでいる。これは、現在の労働総量は不変であり、ゼロサムの関係にあるため、タスクを人間とAIエージェントの間で単に入れ替えることができるという主張だ。「これは、既存の労働者と、同じ仕事をする可能性のある誰か、あるいは何か(他の労働者、機械、あるいは今回の場合はAI)との間でのゼロサム競争を前提としている」
むしろ、生産性の向上は「労働がより価値あるものになるため、労働需要を増やす」はずだと彼は指摘する。人員削減ではなく、生産性とイノベーションが高まり、その結果、人材需要が増える。生産性向上の証拠として、ソフトウェアエンジニアとプロダクトマネージャー(PM)双方の採用増を挙げている。「もしAIが思考を1対1で代替するのなら、『PMに必要なエンジニア数が減る』か、あるいは『エンジニアに必要なPM数が減る』という主張ももっともらしく成り立つはずだ。しかし、実際に見えているのはそうではない。両者への需要が回復し続けているのは、要は、人々がより多くの仕事をこなせるようになっているからだ」
「自動化は反復的な層をそぎ落とし、人間の仕事をより上位のスタックへ押し上げる」と彼は言う。「理由は単純で、人間は拡張したいからだ。ある希少性の層が崩れると、人々は次の層へと進む。食料が安くなれば、住宅、健康、教育、旅行、娯楽、利便性、ペット、安全、美、長寿にもっと使うようになる」
労働市場でも同じことが起きる、と彼は続ける。「人間の野心に限界はなく、古いフロンティアを制覇すれば克服すべき新たなフロンティアが現れるため、新しい仕事は生まれ続ける。新規企業の設立数はすでに急増しており、これはAIの導入とかなり明確な相関関係を示している」



