世界の従業員エンゲージメントが、調査開始以来初めて2年連続で低下した。2009年から労働者が仕事やチーム、雇用主に対して抱く心理的なつながりを追跡しているギャラップが明らかにした。
その影響は深刻だ。従業員のエンゲージメントと、収益性や売上を含む事業部門の生産性との間には強い相関関係がある。エンゲージメントの低下により、2025年単年だけでも世界経済に生産性の損失として約10兆ドルのコストをもたらしたと推定されている。
では、一体何が起きているのだろうか。テクノロジー分野のシニアエグゼクティブであり、ビジネスコーチでもあるリア・ファーマーは、現在の地政学的および市場の動向を背景に、雇用の安定に対する不安から、従業員がやりたくない仕事にしがみついていると考えている。
ファーマーは次のように話す。「今起きているのは、エンゲージメントや意欲の低下、そして状況が変わるか新しい機会が訪れるまで『じっと身を潜める』という姿勢です。職種によってはAIに仕事を奪われるのではないかという大きな不安があり、失業全般に対する恐れもあります。人々が心ここにあらずなのは、関心を失ったからではありません。待っているのです」
また、多くの企業がコスト削減を進めるなか、従業員は人員削減や管理職からのサポート減少により、よりスリムで困難な環境での勤務を強いられている可能性がある。エグゼクティブリーダーシップコーチのサラ・ペルージャは、経済状況が組織に多大なプレッシャーを与えており、その結果として生じる絶え間ない変化や課題を従業員が肌で感じていると指摘する。
ペルージャは「企業は人員を削減し、欠員を補充しないため、残された従業員が追加の業務を引き受けることになる。ビジネスの目標は変わらないのに、それを実行する人数が減っているのだ」と付け加える。
イギリスでは、求人数が5年ぶりの低水準に落ち込むなか、3月までの3カ月間の失業率が予想外に5%に上昇した。これは企業が採用活動にブレーキをかけていることを示唆している。
専門家「リーダー層もエンゲージメントを失っている」
ギャラップの報告書は、リーダー、マネジャー、プロジェクトマネジャー、および一般社員(個人貢献者)の職場での経験の違いについても調査している。一般社員と比較して、リーダーは前日に強いストレスを感じた割合が7パーセントポイント高かった。また、怒り(プラス12ポイント)、悲しみ(プラス11ポイント)、孤独感(プラス10ポイント)を覚えた割合も高くなっている。その一方で、「人生が充実している」と答えた割合は、一般社員の3分の1未満(32%)に対して、リーダーは43%にのぼった。要するに、リーダーは人生の質は高いものの、日々の生活はより過酷であるということだ。
さまざまな業界の中堅・上級幹部を主な顧客とするペルージャは、彼らの90%が職場でエンゲージメントを失っており、それが生産性に連鎖的な悪影響を及ぼしていると語る。「従業員がエンゲージメントを失うと、サバイバルモードで業務を行うようになり、あらゆる領域で生産性に影響が及びます」
これはリーダーが影響力を発揮する能力に大きな打撃を与え、コーチングやメンタリング、他者への権限移譲、前向きで協働的な対話を促進する意欲を減退させるとペルージャは指摘する。
一部の企業では、そのしわ寄せを吸収する中間管理職が存在しない場合もある。ファーマーによると、コスト削減のために中間管理職を廃止した企業は、その代償に直面しているという。「非常に多くの人々が働いているものの、ケアが行き届いていません。従業員の悩みや燃え尽き症候群に寄り添い、育成や配慮を行うはずの人々が、すでに社内からいなくなっているためです」
また、経営トップ層は必要なサポートを提供する余裕がない。「経営幹部には、一般の従業員に時間を投資する余裕がありません。企業が下した中間管理職排除の決断が、悪循環を生み出してしまったのです」と彼女は説明する。
従業員エンゲージメントの問題を解決するには
低下したエンゲージメントを反転させるために、専門家はどのような具体的なアドバイスを提示しているのだろうか。マネジャーやリーダーに対し、組織心理学者であり、コンサルティング会社Working Betterの創設者であるイアン・グレンは、従業員をサポートするだけでなく、課題(チャレンジ)を与えることを提案している。
グレンはこう説明する。「先日、ある若手マネジャーのグループと話をした際、彼らはチームメンバーを仕事上の大きなプレッシャーから守るために、いかに懸命に働いているかを語ってくれました。しかしその後、同じマネジャーたちが自身のキャリアの中で最も多忙で過酷だった時期について、仕事に対する最大の達成感と前向きな姿勢を感じていた時期だったと振り返ったのです」
グレンはこの矛盾が重要だと考えている。「部下をあらゆる困難や要求の厳しい経験から守ることで、マネジャーは成長やプライド、エンゲージメントを生み出す機会をも奪ってしまっている可能性があります。マネジャーの役割は課題を排除することではなく、その課題に目的を持たせ、サポートを提供し、達成可能なものにすることです」
したがって、目指すべきは、従業員がただ義務的に最小限の責任を果たすだけでなく、主体性や創造性を発揮できるように、有意義な課題を与えることである。
サステナブルなパッケージ事業を展開するTiny Box Companyの創設者兼CEOであるレイチェル・ワトキンは、80人以上の従業員を雇用している。彼女の経験上、エンゲージメントの低下は通常、自分の意見が聞き入れられていない、正当に評価されていない、あるいは仕事の目的とのつながりを感じられないことに起因するという。
ワトキンは次のようにアドバイスする。「エンゲージメントの再構築は、誠実な対話から始まります。会社を辞めることなく再び熱意を取り戻す最も効果的な方法の一つは、再び好奇心を持つことです。新しい課題への挑戦や、異なるスキルの習得、あるいは通常の職務以外のプロジェクトへの貢献について、マネジャーに相談してみるとよいでしょう。問題は職務そのものではなく、マンネリ化したルーティンにある場合もあるのです」
またワトキンは、リーダー側の責任として、従業員が自分の仕事がどのように意義あることに貢献しているかを実感できるようサポートすること、および従業員から改善すべき点について意見があった際には、それを批判と捉えずに誠実に耳を傾けることを勧めている。「人々が価値を認められ、意見を聞いてもらえていると感じられる文化を組織が構築できれば、生産性は主要な目標ではなく、その副産物として自然と向上するものです」と彼女は付け加える。
ギャラップは、従業員のエンゲージメントを向上させるために、チームがどのように協力して働くかについて、定期的に有意義な会話を交わすことを推奨している。オープンで継続的な対話の場を設け、個人の財献をより目に見える形で、一人ひとりに寄り添って評価することを勧めている。



